高額運賃の北総鉄道「大幅値下げ」は簡単ではない 「黒字」の損益計算書からは見えない事情がある
千葉ニュータウンと都内を結ぶ北総鉄道が、2022年秋にも運賃を値下げする方針であることが明らかになった。千葉県の熊谷俊人知事は9月22日の県議会代表質問で、同社の室谷正裕社長から「通学定期運賃の大幅な値下げ、北総線内の移動の促進に資する普通運賃の値下げ」を来年秋ごろに実施する方向で検討しているとの報告を受けたと答弁した。
北総鉄道は6月23日に発表した2020年度決算の中で「2022年には創立50周年を迎えると共に、累積損失についても、同年度中に解消できる見込み」が立ったとして、「当社線の運賃値下げの可能性の検討に着手する」と発表していた。
北総は「儲かっている路線」
北総は東葉高速鉄道と並んで首都圏で最も運賃が高い鉄道事業者として知られる。10km乗車したときの普通運賃を比較すると、JR東日本(電車特定区間、以下同)では216円(IC運賃、以下同)、東急は199円なのに対し、北総線は513円と他の事業者より2倍以上高い水準にある。東葉高速も10kmで513円だが、北総線が「高い」のはそれだけではない。
北総線は京成高砂から京成線に、さらに押上で都営地下鉄浅草線に乗り入れて都心部に直通しており、3社局を跨いで都心まで利用する場合、北総の運賃に京成、都営地下鉄の運賃が合算される。千葉ニュータウン中央―日本橋間36kmの運賃は1142円で、JR線で同距離を利用した場合の649円、東急線の377円と比較して桁違いの金額となる。
東葉高速も東京メトロ東西線に乗り入れているが、メトロは中長距離の運賃が安いため、東葉勝田台―大手町間36.3kmで922円だ。JRや私鉄と比べれば割高だが、北総線より200円以上安い。
それほど高額な運賃を取るのだから大赤字なのかと思いきや、実は北総線は首都圏でも有数の「儲かっている」路線である。コロナ前の2019年度決算では売上高約177億円に対し、営業利益約42億円、純利益約26億円。コロナ禍によりJR各社、大手私鉄が軒並み赤字に転落した2020年度決算でも、売上高は前年度比24%減の約134億円ながら、営業利益約22億円、純利益約13億円と、しっかり黒字をキープしているのだから驚きだ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら