高額運賃の北総鉄道「大幅値下げ」は簡単ではない

「黒字」の損益計算書からは見えない事情がある

もう1つ償還額の圧縮に寄与したのが、1990年代後半から続く低金利だ。第2期線について年間利子額を年度期首残高で割った平均利率は、2004年度の2.22%から2012年は1.36%、2020年度は0.58%まで低下。低金利のおかげで償還期間が延長されても利子負担はそれほど増えずに済んでいる。

つまり、北総鉄道を取り巻く問題は「黒字」の損益計算書からは見ることができない。キャッシュフローを追わなければ理解できないのである。では北総鉄道の資金繰りはどうなのか。同社は非上場会社であり、キャッシュフロー計算書を公開していない。そこで(コロナ前の数値にはなるが)公開情報から大まかに推計してみたい。

国土交通省の「鉄道統計年報」に基づき、営業キャッシュフローの源泉ともいうべきEBITDA(利払い前、税引前、償却前利益)を計算してみると、2018年度の北総鉄道の営業利益は約43億円、減価償却費が約25億円で約68億円だ。

一方、現在の2012年から2035年度までの償還計画では、毎年約30億円を返済する計算だ。北総鉄道企画室によると年間設備投資額は非公表だが、減価償却の範囲内で設備投資を行っているとすれば最大で25億円程度(規模の近い東葉高速鉄道が約10億円なので、実際はそこまでいかないだろう)だ。その他、京成や千葉県、UR都市機構からの長期借入金や長期未払金(リース債務)の返済を考慮すると、手元に残る資金はほとんどない。

仮にフリーキャッシュフロー10億円を確保したとして、これを原資に利用者に還元する場合でも営業収益約177億円に対して約5.6%、つまり初乗り運賃210円を200円に下げる程度の値下げにしかならない。

大幅値下げは難しい?

さらなる値下げが実現するとなれば第2期線の償還が完了する2035年以降になるが、その頃には開業から40年以上が経過し、施設の大規模な修繕が必要になってくるうえ、人口減少により営業収入も減ってくるため、結局のところ大幅な値下げは難しそうだ。

北総線の運賃問題を解決する手立てがあるとすれば、利益を増やすか、支出を減らすしかない。関連事業を展開していない北総が利益を増やすには鉄道事業の売上高を増やす必要があるが、2014年3月をもって千葉ニュータウンの新規開発は終了しており、沿線人口の劇的な増加は望めない。

しかし、北総鉄道は利用者の払う運賃とは別の収入と支出がある。「線路使用料」だ。

北総が運行する千葉ニュータウン鉄道保有の車両(右)と京成電鉄の車両(撮影:尾形文繁)

2010年に開業した京成の成田空港線(成田スカイアクセス線)は、高砂―印旛日本医大間で北総線と線路を共有しており、設備の保有者である北総に線路使用料を支払っている。厳密には小室―印旛日本医大間は京成の100%子会社である千葉ニュータウン鉄道(CNT)が所有しており、京成は高砂―小室間の線路使用料を北総に支払う一方、北総と京成は小室―印旛日本医大間の線路使用料をCNTに支払っている。

これらの金額や算出方法についてはさまざまな疑問点が指摘されている。これについては稿を改めて検証する。

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