「上野の一角」でない、御徒町駅の個性とは何か 乗り換え便利、周辺の店舗には独特の味わいも

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ちなみに、松坂屋上野店は江戸時代から令和の今まで同じ場所で商売を続けている、老舗中の老舗百貨店。同様の例は他に日本橋三越しかない。銀座線の建設時には、当初は計画になかった上野広小路駅を、建設費を出すことで設置させるだけの力を持っていた、地域の中核であった。

御徒町駅南口に面した「おかちまちパンダ広場」(筆者撮影)
上野広小路の交差点に建つ松坂屋(筆者撮影)

三越には一歩遅れを取り、着工後の駅追加決定であったため三越前駅のように駅名を「松坂屋前」にはできなかったが、今でも渋谷方面行き改札口と百貨店は、地下でダイレクトにつながっている。また、放送では副駅名として、松坂屋前が流れる。

上野フロンティアタワーと御徒町駅南口の間には、山手線の駅では珍しい広い公共空間「おかちまちパンダ広場」が2012年にオープンした。

台東区の御徒町駅周辺地区の地区計画に基づくもので、コロナ禍以前にはイベントも多く開催されていた。この地区計画は2011年に定められたもの。下町の商業活動の特性に配慮し、建物の1階部分に歩行者用空間を確保し、かつ1階部分には飲食店や物販店以外の業種の出店を規制することで、徒歩による回遊性を高める狙いだ。区画整理や超高層ビルへの建て替えを目的としたものではない。

個性の強い「手作りの街」

秋葉原から上野にかけてのJRの高架橋は鉄筋コンクリート製で、新橋―東京―御茶ノ水間のようなレンガ積みの高架橋とは趣きが違う。東京駅も開業し、関東大震災も発生した後の大正半ば過ぎの建設だからで、この間の技術と建材の進歩を表している。

御徒町駅付近の高架下も飲食店を中心に数々の商店が軒をつらね、にぎわいにひと役買う。この付近の山手・京浜東北線の線路には、上野東京ラインの線路や上野駅につながる留置線も並行しており、高架下のスペースにも余裕がありそうだ。

高架下の商業施設「2k540 AKI-OKA ARTISAN」(筆者撮影)

その中で、秋葉原駅との間にある「2k540 AKI-OKA ARTISAN」はちょっと異色の商業施設。2k540とは東京駅を起点として2km540m地点付近の高架下にあることから。AKI-OKAは秋葉原―御徒町間を表し、ARTISANとはフランス語で職人の意味だ。職人が多く住む地域であることから、職人的なクリエイターによる店舗を集めている。

こうした量販品にはない手作り感覚は、チェーンではない大規模小売店やジュエリーショップとも相通じる。御徒町ならではの「個性」の発揮だろう。

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土屋 武之 鉄道ジャーナリスト

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つちや たけゆき / Takeyuki Tsuchiya

1965年生まれ。『鉄道ジャーナル』のルポを毎号担当。震災被害を受けた鉄道の取材も精力的に行う。著書に『鉄道の未来予想図』『きっぷのルール ハンドブック』など。

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