人間模様を描きすぎ「怪作になったゲーム」の正体 遊んだ人は阿鼻叫喚、感情がひどくかき乱される

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もう1人の主人公といえる「アビー」。彼女の存在はひた隠しにされていました(画像はPlayStation公式サイトより)

このアビー、実はジョエルやエリーに恨みを持っています。そう、『The Last of Us 2』は単なるエリーの復讐譚ではありません。むしろジョエルとエリーが前作でとった行動が暴力の連鎖を呼び、さらなる凄惨な結果を招く、複雑で残酷すぎる話なのです。

前作でプレーヤーはジョエルやエリーに感情移入できていたため、彼らの行動が間違ったものではないと確信できました。しかし、続編ではそれを間違っていると主張するアビーというキャラクターが出てきてしまう。おまけに、『The Last of Us 2』ではアビーの事情や心境についても丁寧に描写しているのです。

リアリティを追求しすぎた結果、苦い体験が待ち受ける

単なる勧善懲悪ではなく、過去の自分の行動が間違っていたと突きつけられる。おまけに、恨みを持っている相手にもきちんとした理があるとわかっていくのです。こうなるとプレーヤーは混乱し、理解を拒む可能性もあるでしょう。それこそ怒り狂って本作をひどいゲームだと言い始めたり、何かに怒りをぶつけだしたりもするかもしれません。

この連載では傑作ゲームを紹介していますが、『The Last of Us 2』は単純に多くの人が楽しく遊べるようなゲームではありません。むしろリアリティを追求しすぎた結果、苦虫を噛み潰すかのような体験が待ち受けている作品なのです。とはいえ、それでも私は本作を傑作と呼ぶべきゲームだと思っています。

前作と同じく、『The Last of Us 2』でもこちらを本気で殺そうとしてくる感染者との戦いは緊張感にあふれていますし、人間の敵は賢くなって犬をけしかけてくるようになりました。また、アビーを操作する場面では特別なシチュエーションもいろいろと用意されています。

崩壊した世界は美しく、これが復讐の旅でなければ素直に感動できたことでしょう。ここまでグラフィックに力を入れているゲームなのに、それがどこか薄暗く見えてしまうほど、エリーの復讐の旅は汚れたものになっています。

力の入っているグラフィック(画像はPlayStation公式サイトより)
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