人間模様を描きすぎ「怪作になったゲーム」の正体 遊んだ人は阿鼻叫喚、感情がひどくかき乱される

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一方で、本作は性的マイノリティーの人たちに対する配慮もあり、アクセシビリティ(障害のある人でも利用しやすくなる機能)も充実しています。テキストの読み上げやフォントサイズの拡大はもちろん、聴覚の障害のある人でも音声の方向がわかるようにしたりと、多くの補助機能があるわけです。

このようにゲームの出来栄えは非常に優れていますし、プレーヤーに対する配慮もきちんとしています。しかしなぜそんな作品が、ここまで残酷な物語を描いたのでしょうか。実は『The Last of Us 2』は単なる“胸糞が悪いゲーム”ではなく、ゾンビものとしてのテーマをきちんと描こうとしているのです。

前作の主人公だったジョエル(画像はPlayStation公式サイトより)

人は誰かにナイフを突きつけて生きている

平和な世界にいると忘れてしまいますが、生きることは戦いでもあります。豊かな社会であれば多くの人が共存できますが、もし『The Last of Us 2』のようなパンデミックが起こったら? 極端に国が困窮したら? あちらこちらで暴力をふるう人間が出てくるでしょう。

もしナイフを突きつけられて自分が守っているものを要求されたら、立ち向かわなければなりません。そうでなければ自分の大切なものは守ることができず、奪われるだけなのですから。平和な世界でもそれは同じで、自分の権利を守るために(比較的穏便な方法で、とはいえ)戦うのです。

「人は誰かにナイフを突きつけて生きている」というのが、本シリーズのテーマではないかと私は考えています。しかし平和な世界ではすっかり忘れられた残酷な真実であり、それをあまりにも優れた技術できちんと描いてしまったのが『The Last of Us 2』なのです。

『The Last of Us 2』は楽しいゲームを遊びたい人には向いていませんが、苦しい体験も作品として味わえる人にはほかにない傑作といえるでしょう。

・遊べるゲーム機:PS4、PS5
・公式サイトはこちら

第3回:ゾンビゲームなのに「感動で震える」超傑作の魅力
第2回:「人に騙されてなぜか笑顔出る」凄いゲームの正体
第1回:共感しかない「25歳女性の恋」をゲームにした凄み

渡邉 卓也 ゲームライター

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わたなべ たくや / Takuya Watanabe

いわゆるテレビゲームを専門にコラム・評論などの記事を書くライター。大学卒業後はサラリーマンになったが、満足にゲームを遊べない環境にいらだちを覚えて転身。さまざまなメディアにゲーム関連の記事を執筆。駄作に対して厳しく書いてしまうことでも知られる。

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