予測されることは、国際的な商品価格の高騰と、サプライチェーン上の物不足によって、この先、インフレが加速するということです。そしてわたしたちに降りかかる問題は「それがどこに行きつくのか?」という点に絞られるでしょう。具体的には第3次石油ショックのリスクがあるのです。
過去2度起きた石油ショックはどちらも産油国の政治問題が引き金となりました。1973年から1974年にかけての第1次石油ショックは中東戦争がきっかけで石油が入ってこないことから深刻な物不足と狂乱物価を引き起こしました。1979年から1980年にかけての第2次石油ショックはイラン革命による減産がきっかけで起き、日本は比較的小さい影響で済んだもののイランと敵対したアメリカではインフレに加えてガソリンスタンドに長蛇の列ができるなどの影響が起きました。
今回のウクライナ侵攻の怖いところは、ロシアからの原油供給が途絶えるにもかかわらずOPEC各国が石油の増産に踏み切っていないことです。
駆け引きとしての原油高も同時に起きている
産油国とすれば「この先、脱炭素の動きが進むことがわかっているので、むやみに設備投資することはできない」ということです。しかしOPEC加盟国は増産しないことが脱炭素を進める先進国に対する政治的カードになっていることも理解しています。つまり駆け引きとしての原油高も同時に起きているわけです。
その先にあるのは今回のインフレがスタグフレーションに発展することです。
不況下で賃金レベルが上がっていないにもかかわらず物価だけが上がる現象のことをスタグネーション(停滞)とインフレーションを組み合わせた造語でスタグフレーションといいます。
これは経済学的には最悪の不況のひとつです。日本政府がこれまでデフレ脱却のために求めてきたインフレは、経済が活気づいて賃金レベルが上昇し、その結果、さまざまな商品・サービスの価格が上がっていく良いインフレです。
しかし今起きているインフレはそうではありません。国際的な商品価格が値上がりし、しかも1ドル=117円台の円安でそれらをさらに割高に買わなければならなくなっている。供給量も十分ではないので物不足も起きそうだという状況です。
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