医師・弁護士の「近未来」はどうなる? 弁護士ドットコム×メドピア 社長対談(第3回)

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――日本人はむやみに医者にかかりすぎているという指摘もあります。だから医療費が膨大になって、財政を圧迫していると。

元榮:もうちょっと一般大衆薬の薬効を強めて、自宅で治せるようにできないですか。

石見:薬のネット販売などもそうですが、そこには必ず責任というか、ある程度リスクを許容するコンセンサスがないといけない。やはりどんな薬でも危険はあるので、たとえ風邪薬でも、たまに死者が出たりするんですよ。でも医者が対面で診察して処方すれば死なないのかといえば、そうではない。ですから、リスクがある程度あるということを、みんなが許容したうえでなら賛成です。

ところで元榮さんにお聞きしたかったのですが、僕はほかの業界の人から、「なぜ医者は大事な自分のノウハウを開示してしまうんですか?」と言われて驚いたことがあるのです。医者同士って、けっこう知恵や経験をシェアする文化で、「こういうテクニックがあるんだ」というようなことは、お互い同じ診療科だとしても隠すことはない。弁護士はそのへんはどうですか。弁護士同士って、言ってみればライバルじゃないですか。

元榮:基本的にはオープンですけど、人によっては隠す場合もあると思いますね。ある程度は開示するけれど、本当のキモのところは言わないとか。わたしはオープン志向ですが。

石見:もしかしたら法廷で戦うことになるかもしれない相手だからですか。

元榮:それもあるかもしれませんね。

石見:そこは文化が違うのかもしれませんね。医師も全部オープンにするわけではなく、美容外科など自由診療の領域では、隠すところもあります。たとえば美容外科の先生に「ほかのいい美容外科を紹介してください」と言っても、絶対にしてくれないと思いますよ。「うちがいちばんです」と言うはずです。

元榮:なるほど。こうしてお話ししてみると当たり前ですが、医師と弁護士とでは共通点もあれば相違点もありますね。ただ決定的に言えるのは、医者、弁護士の世界でもネット活用が進んできているということなんですよね。だからこそわれわれがウェブ企業を立ち上げるようになった。ネット化されていない、数少ない専門家市場でしたが。

石見:でも僕は規制が多かったからこそ、まだ起業の余地が残されていたと思う。ゲーム業界などは、もはや参入が厳しいじゃないですか。われわれは偶然そうじゃないところを生業にしていたから、そこを変えていける余地があった。すごくラッキーだと思います。弁護士もそうですよね。

元榮:弁護士も同じです。弁護士業法とか弁護士会があり、まだあまり関連ウェブサービスが育っていない。たぶん医師の世界も医師法や薬事法などがあって、日本の中の外国みたいな、独自の風土があるでしょう。ネットベンチャーの経営者には自由を尊ぶ人が多いから、普通なら敬遠する領域ですよ。

石見:歴史的に見ても、日本が変わるときって、黒船が来るか、もしくは「中の人」が変えるかじゃないですか。その点、僕たちは「中の人」。だからできたんじゃないかな。

元榮:本当にそうですね。似た立場の者同士、これからもお互い頑張りましょう。

(構成:長山清子)

※この対談は今回で最終回となります

吉川 明日香 東洋経済 編集者

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よしかわ あすか / Yoshikawa Asuka

早稲田大学商学部卒業後、2001年に東洋経済新報社に入社。記者として食品、建設、精密機械、電子部品、通信業界などを取材し、『週刊東洋経済』や『会社四季報』等に執筆。2度の産休・育休を経て復帰。2012年秋の東洋経済オンラインリニューアルより、同編集部。2016年4月から東洋経済オンライン副編集長、2020年10月から東洋経済オンライン編集長。2023年4月より編集部担当部長。

 

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