「長すぎる老後」に私たちはいかに稼げばいいのか 「高齢者」でなく「戦力」として評価されるか

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高齢者の働き方

河合:定年退職後も働くことについて考えてみましょう。自分がもらえる年金受給額が思ったより少ないことに驚き、老後の生活が不安になって「働けるうちは働き続けたい」と言う人が多くなっています。しかしながら、個々人の思いと企業の都合との溝はなかなか埋まりません。

働く側は、できれば同じ会社でこれまでやってきた仕事を続けたいし、なるべく給与水準が下がらないようにしてほしいと考えるでしょう。いっぽう、企業側は、総額が決まっている人件費はなるべく若い優秀な人材の確保やリスキリングに投じたい。ましてや、AIを使って事務処理など定型業務をなくそうとしているわけですから、こうした業務に高齢者を回すことは矛盾となります。

牧野:私の学生時代の同期生たちも、そのような待遇に陥っている人が多いのですが、みんな口を揃えて文句を言っています。「今までと同じような仕事をしているのに給与水準が大幅に下がるのは納得できない」と。これって、会社に所属することでしか稼ぐことができなかった人の典型例ですよね。スキルがある人なら、転職して収入を維持し続けることができるはずですから。ところが、そうした可能性はないし、本人たちもどうしてよいかわからないでいるため、文句だけを言っているわけです。

河合:もし今後の高齢者が、これまでの高齢者と同じくサポート的な業務や軽作業に就くとするならば、AIによる代替だとかえってコストが高くつくという業務が中心になるでしょう。しかし、こうした業務はそれほど多くは残らないと思います。

ですから、同じ会社で働き続けたいなら、生涯現役を目指すことです。現役時代に突出したスキルを身につけている人や、特殊な人脈を持つ人は、「高齢者」ではなく「戦力」として評価されやすいでしょう。そうした特別の存在になれなければ、週2、3日の勤務や大幅な収入ダウンを受け入れる選択にならざるを得ません。でも、ものは考えようです。週2、3日の勤務ならば、副業の許可を得て複数社で働くということも可能ですから。

他方、勤務してきた企業ではなく、老後は別の企業で第2の人生を目指すことも選択肢です。勤めてきた企業の要求には応えられなくても、他社では戦力となるケースは少なくありません。とはいえ、定年退職後の転職は難しいですから、他社に再就職するなら、50代になった頃から準備を始める必要があります。たとえば、外国語を学び直す、現役中に畑違いと思える分野の国家資格を取得しておくなど、次を見越してリカレント教育への自己投資をすることです。

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