数十年後、タワマン住民を待ちうける驚きの未来 東京圏の外縁部にゴーストタウンが広がる

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牧野:住民は80歳以上の高齢者ばかりという状況で、毎年のように襲う豪雨や台風、近い将来に想定される直下型地震にどう備えるか。災害弱者である高齢者をどう守るか。現実を見れば、行政の力だけでできるとは思えません。住民たちの助け合いも必要です。

しかし、個人情報保護の観点から隣人との情報共有が難しくなっています。加えて、東京は地域コミュニティーが形成されていないことが多く、助け合う・支え合う機能が弱い。そもそも、いざという時に高齢者を背負う若者のほうが少ない。このようななかで大災害に見舞われたらと思うと、ぞっとします。 

河合:若年層中心の街づくりをしてきた東京圏は、高齢者にとってきわめて暮らしづらい街です。ビル内や公衆トイレのバリアフリーはかなり達成されていますが、そこにたどり着くまでの道路は段差が多すぎます。バスの乗降に時間がかかる人が増えれば、バス停での停車時間が長くなり道路は渋滞します。今でも電車で「具合の悪いお客様の救護活動のため」と遅延の車内アナウンスが流れることがありますが、そのような状況は増えることはあっても減ることはないでしょう。

これまで大都市に求められてきたのは、人々を「なるべく速く、なるべく大量に」運ぶインフラ整備でした。しかし、今後は高齢者のゆっくりしたスピードにも合わせないといけません。2030年に向けて、どのような街に変えていくかは喫緊の課題です。

タワーマンションとニュータウンの共通性

牧野:ここで、今人気のタワーマンション(タワマン)について考えてみましょう。乱暴な言い方をすれば、住民を横に並べたのがニュータウンで、縦に並べたのがタワマンです。多摩ニュータウン、鳩山ニュータウンなど旧来のニュータウンは丘陵地を横に広がったのに対し、タワマンは縦に長く伸ばしたものです。実際、1棟に数百人~1000人を超える住民が居住しており、人口だけを見たら、立派な街です。

この例として最適なのが、多くのタワマンがそびえ立ち、「タワマン銀座」とも呼ばれる武蔵小杉(神奈川県川崎市)です。武蔵小杉の「売り」は、交通の便と通勤時間の短さです。JR横須賀線、JR南武線、東急東横線、東急目黒線が走り、都心にアクセスしやすいのです。

逆に言えば、都心に通う必然性が薄れたとたんに、優位性は揺らぎます。歴史や景観などで特筆すべきものはなく、決して住みやすいとは言えません。武蔵小杉駅構内に入るのに時に規制がかかるほど混雑したり、小学校の1学年が1000人を超えたりするなど、タワマンの集中ならではの問題が起こっています。

河合:タワマンは1つの街と言ってもいいほどの住民数なのに、上層階、中層階、低層階では住民の意識は異なっており、コミュニティーが形成されにくいのが欠点です。そこで育った子どもたちには「地元」意識はなかなか芽生えないでしょうね。タワマンの購入者が高齢化する頃には、子どもたちは独立して離れ、「オールドタウン」となった現在のニュータウンのような未来をたどるのではないでしょうか。

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