ロシアが払う莫大な戦費「戦争とお金」の深い関係 日本含む過去の戦争を振り返り損得を弾いてみた

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ウクライナの首都キエフでロシア軍の攻撃を受けた住宅(2月26日撮影、写真:Erin Trieb /Bloomberg)

ロシアのプーチン大統領が、ウクライナに軍隊を侵攻させたニュースは、世界に衝撃を与えた。第2次世界大戦以降、このような大規模な戦争は起こるはずがないという安心感が、世界にはあったのかもしれない。ロシア国内にプーチンを止める人間が果たしているのかどうか、世界中が憤りと不安に駆られている中で不透明極まりない状態が続いている。

もともとロシアは、チェチェンやシリアのアレッポで同様の侵略戦争を繰り返しており、民間人も含めて徹底的に破壊、殺戮する戦争を繰り広げてきた。

気になるのは、大量の大型兵器や人員などロシアが戦争に投じるお金だ。世界各国で、ロシア経済を封鎖するための政策が一斉に実施されているが、その効果はあるのか……。

そもそも戦争とは、多大な犠牲を払ってでもやるだけの価値があるものなのか。戦争をお金の面から見て、戦勝国になったとしてもペイできるのか……。戦争を経済の面から、その収支決算を考えてみた。

「勝つ」と「負ける」では天国と地獄の差?

言うまでもないことだが、武器を使うにしても、兵士を戦場に送り込むにしても、戦争には金がかかる。戦争が終わった後には「軍人恩給」という形で保障もしなければならない。勝っても負けてもその損失は極めて大きい、と考えるのが自然だ。

にもかかわらず、なぜ政治家は戦争をするのか……。極めて不可解だが、メンツと自分の政治的立場を守るために、国民を危険に追いやることもいとわない。それが政治家の思考回路なのかもしれない。

実際に、これまで戦争でどれぐらいのお金が使われたのだろうか。まずは過去の戦争の経費について見てみよう。『戦争の経済学』(ポール・ポースト、山形浩生訳、バジリコ刊)によると、アメリカがこれまで経験した大きな戦争のコストは、次の通りになるそうだ。

〈アメリカの主要戦争の直接費用総額、戦費総額の終戦年GDP比〉
・第1次世界大戦…… 260億ドル、36%
・第2次世界大戦…… 2880億ドル、132%
・朝鮮戦争…… 540億ドル、14%
・ベトナム戦争…… 1110億ドル、8%
・湾岸戦争…… 610億ドル、1%
・イラク戦争……月額40億~50億ドル、1%以下

金額ベースでの費用総額は、長い年月が経っているために簡単には比較できないが、最終年のGDP比を見るとその大きさがわかる。実際に、1939~1945年まで行われた第2次世界大戦では、戦勝国のアメリカでさえも最終年GDPの132%ものコストをかけている。

当時の物価水準を考慮に入れないと比較できないが、現在の貨幣価値に換算して考えてみるとわかりやすい。アメリカの現在のGDP(国内総生産)は約20.94兆ドル(2020年)。その132%といえば「27.64兆ドル」。日本円にしてざっと3178兆円(1ドル=115円)にも達する。いかに莫大な金がかかるかがわかる。しかも、アメリカは戦勝国であり、1941年の途中から参戦している。これが敗戦国であればどんなことになるか、想像がつくというものだろう。

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