21歳で芥川賞「宇佐見りん」だから描ける独特世界 高橋源一郎・斎藤美奈子が選ぶブックリスト

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斎藤:逆なんですね、SNSが身体化しちゃっている。

高橋:身体の一部っていうか、SNSが身体の機能になっている。それをテーマにここまで書いたのは『かか』が最初だと思います。

斎藤:拡張された五感なんですね。尾崎翠の『第七官界彷徨』(1933/河出文庫他)とか、太宰治の『女生徒』(1939/角川文庫他)とかの系譜も私は感じます。

読者が「あ、自分もそうだわかる」って

高橋:なるほどなあ。

斎藤:五感のリアルはストレートに伝わるんですよ。『推し、燃ゆ』もそうだけど、ふだんはあまり小説を読まないような若い読者がついているでしょう?

高橋:それは、小説のひとつの機能ですね。読者が自分の置かれている位置を確認できる。「あ、自分もそうだ。わかる」って。

斎藤:まさに二十歳じゃないと書けない小説ですね。

高橋:時代のアンテナですからね、作家は。でも、アンテナって、実はノイズも含めていろんなものが入ってくるから、そこから選んで、自分の言葉として発信しなきゃならない。宇佐見さんは、その点がすごく正確だと思います。

【令和を考えるためのブックリスト】
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高橋源一郎選

石沢麻依『貝に続く場所にて』(芥川賞他)……2021/講談社
伊藤比呂美『道行きや』……2020/新潮社
宇佐見りん『かか』(三島賞他)……2019/河出書房新社 
千葉雅也『オーバーヒート』……2021/新潮社
乗代雄介『旅する練習』(三島賞他)……2021/講談社
ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』(毎日出版文化賞他)……2019/新潮社
+『他者の靴を履く アナ―キック・エンパシーのすすめ』……2021/文藝春秋

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斎藤美奈子選
海堂尊『コロナ黙示録』……2020/宝島社
金原ひとみ『アンソーシャル ディスタンス』(谷崎賞)……2021/新潮社
左右社編集部編『仕事本 わたしたちの緊急事態日記』……2020/左右社
夏川草介『臨床の砦』……2021/小学館
李琴峰『ポラリスが降り注ぐ夜』(芸術選奨新人賞)……2020/筑摩書房
高橋 源一郎 作家

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たかはし げんいちろう / Genichiro Takahashi

1951年広島県生まれ。作家、明治学院大学名誉教授。横浜国立大学経済学部中退。81年『さようなら、ギャングたち』で群像新人長編小説賞優秀作となる。88年『優雅で感傷的な日本野球』で三島由紀夫賞、2002年『日本文学盛衰史』で伊藤整文学賞、12年『さよならクリストファー・ロビン』谷崎潤一郎賞を受賞。著書に『ぼくらの民主主義なんだぜ』『ゆっくりおやすみ、樹の下で』『たのしい知識 ぼくらの天皇(憲法)・汝の隣人・コロナの時代』『ぼくらの戦争なんだぜ』ほか多数。

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斎藤 美奈子 文芸評論家

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さいとう みなこ / Minako Saito

1956年、新潟市生まれ。『妊娠小説』『文章読本さん江』『紅一点論』『モダンガール論』『戦下のレシピ』『冠婚葬祭のひみつ』『名作うしろ読み』『ニッポン沈没』など多数。

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