増税先送りは、世代間格差の是正機会を奪う

時間的猶予だけでは、何も問題は解決しない

対象となっているのは、待機児童解消などの子ども・子育て支援新制度の実施、低所得の年金生活者に対する年金生活者支援給付金の支給、低所得者に対する社会保険料の軽減、医療と介護の提供体制を再編するための基金の増額などである。これらは、消費税を再増税すれば容易に認められたはずの社会保障の充実策だが、代替財源がなければ実施に黄信号がともる。

もちろん、政権内部での利害調整をしっかり行えば実施は可能だ。「増税せずとも子ども子育て支援など重要なものは、ないがしろにするな」と言うのは正論だが、増税分を充てるという約束で充実を認めてきたという政権内部の信頼関係や経緯は無視できず、財源探しに選択肢が狭まっているのは確実で、それを克服するにはやはり政治力が要る。

消費税再増税を先送りすることで、拙稿「もし消費税を10%に上げなかったら?一見いいことづくめだが、本当にできるのか」でも述べたように、このままだと2015年度の財政健全化目標が達成できない恐れがある。

法人税の自然増収分は、どう使われるのか

ただ、2015年度の財政健全化目標の達成には、安倍首相も意欲を示しているとされる。2015年度に予定通りの再増税によって追加的に入ると見込まれる税収は約1.5兆円とされる。

この税収のうち半分近くは、前述の社会保障の充実のために新設または補強される支出に充てる予定だったから、それを止めれば財政収支の悪化は防げる。残りは、というと法人税の自然増収などが挙がっている。

ところが、来年度から法人実効税率を引き下げることは閣議決定している。となると、法人実効税率の引下げをやめないなら、法人実効税率を引き下げても税収が減らないように課税ベースの拡大(いわば別の形での増税)をせざるを得なくなる。

消費税率を予定通り引き上げなかったことによって、前掲した法人税の自然増収は、法人税率のさらなる引下げではなく、収入不足の穴埋めに充てられることになるのだろうか。ここでも、政権の選択肢を狭めることになる。

8%から10%への増税分の税収は、2015年度には約1.5兆円だが、2016年度には約4兆円と見込まれる。仮に再増税を先送りして2015年度の収支改善が取り繕えたとしても、2016年度には名目成長率が3.6%となっても社会保障給付が高齢化で増大するのも一因で、穴埋めができないほど赤字は拡大する。

ここまでが、経済学でいうところの、規範的分析(あるべき姿を議論)でなく実証的分析(良し悪しを不問として実態がどうかを議論)である。

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