日本株はこれで「最悪期脱出」と断言できるのか 「ロシアのウクライナ侵攻後」の注目点は何か
そうした動きの背景として、連銀の金融政策の影響が指摘できる。昨年は長い期間、超金融緩和状態が持続したため、低金利や金余りを背景に、投資家が株式などのリスク資産をあれもこれも買っていた。ところが、11月からテーパリング(量的緩和の縮小)が開始されたため、投資家があれもこれも買いまくるという投資を維持することに疑義を生じ、「あれかこれか」の選別を始めたと推察される。
中小型株は、長期的に利益の高成長が見込めるという投資魅力があるが、業態の安定性という点でリスクも高い。このため投資家が、リスクの高い中小型株を避け、成長性に欠けるが安定性の高いS&P500採用の大型株へと資金を移したのだろう。
さらに12月から連銀がテーパリングを加速し、近い将来の利上げまで示唆し始めたため、リスク回避的な投資家の姿勢も一段と進み、あれもこれも売るようになって、今年初からは大型株も中小型株も売却を始めて、債券や現金に資金を移したと推察する。こうした投資家の行動が、株式市況全般の下落を進めたと解釈している。
そうした推移を経たアメリカの株式市況において、1月27日を底として、ラッセル2000が底固さを示している。終値ベースでは、S&P500は先週23日に年初来安値を更新したものの、ラッセル2000はその1月の安値を割り込んでない。
ラッセル2000が示してきた中小型株の動きが、下落局面において全体相場の軟調展開入りの先行指標だったとすれば、上昇局面でも同様に先行指標である可能性はあるだろう。
つまり、株式市況全体を見ると、まだ不透明感が強く下押しが想定されるが、投資家の行動には徐々に「リスクを回避するよりも長期成長性に投資しよう」という姿勢がにじみ出ているのではないだろうか。アメリカの株価の全体相場について、3月頃とみられる最安値形成以降に上昇基調入りする可能性が、この中小型株の動きに示唆されていると考える。
日本でも小型株が底堅い動き、例外はマザーズ
一方、日本ではどうだろうか。
TOPIX(東証株価指数)の中に、大型株指数(TOPIX100)、中型株指数(TOPIX Mid400)、小型株指数(TOPIX Small)がある。そのうち大型株指数と小型株指数の動向を見ると、大型株指数は2月10日にピークアウトした形で、全体相場は大型株中心に軟調展開を鮮明にしているものの、小型株指数はラッセル2000と符合する1月27日に最安値をつけて、その後は底固い。
こうした動きからは、やはり日本でも、中長期的な株価の上昇基調入りはまだ早いが、それほど遠いことでもないと見込まれる。
ただ、こうした日米の中小型株に明るい兆しが見える中で、例外的に下落基調を続けているものがある。東証マザーズ指数だ。
マザーズについては、なかなか明確な底入れが見いだせない。マザーズ指数の不振の背景としては、2点ほどの指摘をさまざまな機関投資家から聞く。
1つは、不正会計などの企業スキャンダルが多く、「まっとうな企業がほとんどだ」と信じたいものの、投資家がマザーズ市場全体に疑念を抱いているという意見だ。
もう1つは、PER(株価収益率)などの投資尺度が割高すぎるという声だ。先週末(2月25日)時点で、ファクトセット調べによる先行き12カ月間の企業収益予想値のアナリスト平均を用いると、TOPIXの予想PERが12.8倍にとどまるのに対し、マザーズ指数はなお79.4倍にも達している。
世界的に中小型株指数が堅調さを増す中で、マザーズ市場はしばらく例外であり続けるのかもしれない。
(当記事は会社四季報オンラインにも掲載しています)
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