1000億円の経済効果、「多言語対応」元年へ 3大シンクタンクが読む2015年の日本<第1回>

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こうした訪日外国人の増加によりもたらされるものは、日本の街の雰囲気が変わるということだけではない。「訪日外国人の消費動向平成25年年次報告書」(日本政府観光局)を見ると、2013年の訪日外国人旅行消費額は1兆4167億円に上り、内訳は宿泊料金が約3割、買い物代が約3割、飲食費が約2割となっている。こういった数字からも、訪日外国人による訪問地での消費に期待がかかる。ここが訪日外国人を増やし、観光を振興することの一番の狙いであろう。

そのためには、国を挙げて、訪日外国人を受け入れる体制を整備しなければならない。そのうえで最も必要性に迫られるものは外国語、それも英語以外の言語への対応、つまり多言語に対する対応である。

英語の対応すら十分ではない日本の現状

しかしながら、訪日外国人の数は増加しているにもかかわらず、訪日外国人の「言葉が通じない」「案内がわからない」といった不満や不安を解消するには至っていないのが現状だ。

日本政府観光局が2013年3月に公表した「平成24年度TIC(ツーリスト・インフォメーション・センター)利用外国人旅行者調査報告書」によれば、外国人旅行者が日本滞在中に不便と感じた点(記述式)として挙げられたものは、主に「言葉(英語が通じない・英語の標識や英語の説明表示が少ない等)」「交通(料金やルートがわかりにくい・英語の案内表示が少ない等)」「通信(Wi-Fi設備が少ない等)」であった。

では、日本はこれまで何もしてこなかったのだろうか。実は、訪日外国人を増やし観光を振興する上で、多言語対応を進めることの必要性が指摘されて久しい。

たとえば、東京都では、2007年に「国内外旅行者のためのわかりやすい歩行者用案内サイン標準化指針」を策定し、4言語(日本語・英語・中国語・韓国語)に対応した観光案内標識の設置や、東京都観光ボランティアによる7言語(英語・中国語・韓国語・ドイツ語・フランス語・イタリア語・スペイン語)での都内主要観光ルート案内サービスなどを行っている。

しかし、現実は前述の報告書からもわかるように、観光立国日本を目指しながらも、英語の対応すら十分ではないという状況である。

オリンピックがきっかけで個人から多言語対応が進む

このような状況を脱するきっかけとなったのが、2013年の東京オリンピックの開催決定だ。東京都は、開催決定を契機に、2014年3月に関係省庁や鉄道、業界団体など計56機関が参加する「2020年オリンピック・パラリンピック大会に向けた多言語対応協議会」を設置し、わかりやすい表記の整備を進めている。

具体的には、英語およびピクトグラム(絵文字)での対応を基本としながら、必要に応じて中国語・韓国語などほかの言語も含めて多言語化を実現する方針だ。このような試みからわかるように、企業や行政による多言語対応は、東京オリンピック開催が決定したことにより大きく加速することが期待される。

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