もちろん、大手製造業の海外現地生産比率が高まっているので、円安が進んでも例えば20年前と比べると輸出を押し上げる効果は小さくなっているだろう。それでも、日本企業について観光業などのサービス業を含めて考えれば、円安によって日本企業の価格競争力が高まるのは当然である。
なお、実際に製造業の現場で起きていることは、アベノミクスにより、円安が進んでも日本の製造業はドルベースでの販売価格をほとんど下げていないということだ。
シェアよりも、収益率重視しはじめた日本企業
これは、価格競争でマーケットシェアを拡大させるよりも、海外市場での収益率を高めることを企業が最も意識しているためだと推察される。
だから、数量ベースでの輸出の伸びは限定的としても、円安によって円換算した輸出金額そして輸出企業の売上高は、2014年になってから増えているのである。それが、4月からの消費増税で国内需要が大きく落ち込みながらも、一方で円安によって製造業を中心に企業業績が底上げされそれが賃上げの原資となっている。
つまり、円安が消費増税のショックを和らげている、というのが現実に起きていることである。10月31日の日銀の追加金融緩和も、日本経済回復への下支え効果があることは、間違いない(だが12月に消費税の再増税を決定すれば、当然この効果は減殺されるが、これについては次回以降、読者の皆さんと影響を考えていこう)。
ロジカルな経済理論を踏まえ、アベノミクスがもたらした効果を建設的に考えることが、日本経済のありのままの実態を把握することにつながるだろう。
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