賛否両論の「お泊まりデイサービス」 厚労省の狙いは規制強化か
介護を受けている高齢者が日中を過ごすデイサービス(通所介護)。電動ベッドなどの福祉用具レンタルや訪問介護とともに、最も普及している介護保険サービスの一つだ。このデイサービス事業所内の静養室や居間を用いて夜間に高齢者を宿泊させる新サービスの創設をめぐり、賛否両論が渦巻いている。
論争が勃発したのは8月下旬だ。8月23日の社会保障審議会介護保険部会で厚生労働省が配布した資料に「お泊まりデイサービスの創設」という文言が突如、登場。審議会出席者から反対論や慎重論が相次いだが、同30日付の2011年度予算の概算要求で、「家族介護者支援(レスパイトケア)の推進」として「100億円」が盛り込まれた。
家族の介護疲れ解消や冠婚葬祭などの急用に対応するために、通い慣れたデイサービス事業所がお年寄りを一時的に預かるサービスに対する潜在的な需要は大きい--。厚労省はこうした考えに基づき、予算要求を掲げた。破格ともいえる100億円は、全国に8000ベッド分(2000カ所)を宿泊用として確保するための設備改修費用(スプリンクラーの設置など)として投じる。
ところが、こうした方針に反対や懸念の声が続出した。
日本医師会の三上裕司常任理事は9月8日の記者会見で、「要介護高齢者の宿泊には、厳しい施設基準や人員配置基準が必要。病院や老人保健施設など、医療機能を持つ施設のショートステイを活用するべきだ」と語った。
介護保険外で宿泊を提供している宅老所からも懸念の声が持ち上がっている。認知症高齢者への支援で20年の歴史を持つ「宅老所よりあい」(福岡市)は、介護保険に宿泊を組み込むことに反対する意見書を提出。「介護保険内のサービスとして宿泊の単価が点数化された場合、多くの利用者は限度額を超えてしまい、宿泊どころか通所も制限されかねない。その結果、認知症高齢者の在宅生活を支えてきた拠点を潰す結果になりかねない」というのが理由だ。