坂之上:確かにそうですね。
中山:そういう、何兆何京の命のつながりをね、じっと想像してみて下さい。そうすると、今ここに人がいるんだと思ったときに、人は在るだけで、そこに生きてるだけで、表現できないくらいに尊いと思うんです。
坂之上:何万年前から、だれもが、そうやってつながってきた。
中山:はい、だから、いろんなことがあって追い込まれて、自殺念慮に及ばれる方がおられるんですけど、同じ社会に生きる仲間として、なんとかその命を支えられないかなと思うんです。
誰の人生も違いは紙一重
坂之上:どうしてそう思われるようになったのですか? 身内とか身近に何かあった経験からですか?
中山:いえいえ。単に、自分の立場をひとつとっても、たまたまじゃないか、って思っているだけなんです。生まれたときからお父とお母がいる家庭に育って、飯(めし)食べさせていただいて、教育も受けさせていただいて、たまたまそういう環境だったから、自分がいる。
ところが、ホームレスの方とかいろんな方がおられるときに、僕の生きてきた人生とどれだけ違うかといったら、もう紙一重なんです。
坂之上:紙一重?
中山:この同じ社会で、奇跡のように隣り合わせに生きている人がそういう状況になったとき、何かさせていただかなあかん、というのが、表面に顕(あらわ)れる濃淡はあっても、人が深いところで共有している人の情であると思うんですよ。
坂之上:でも、一般的には、他の人に思いを馳せられない人が多いと思います。東京でも、自殺者で電車が止まるとたいていみんな怒ってます。
中山:でも、どなたでも、心の根のところでは誰の命も一人ひとり尊い、守らなければという感情は通底していると思うんです。
坂之上:人々がそう思う力を、忘れかけているだけだ、と?
そう考えると、自殺者がでて電車が止まってそれにイライラしている社会なんて確かに異常ですよね。
中山:今の状況はしっかり受け止めながら、他方、条例の中では、一人ひとりの命に真剣に向き合い、命が一番大切にされる社会づくりの大切さについても盛り込んで、みんなで共有していきたいんです。
国であれ、市町村であれ、行政というものの根っこに共通して言えるのは、人の生活を支えたり、人の命を守ったりということが、行政の原点にある尊い本分だということです。だから、自殺対策は命を支え、護(まも)るための問題を正面にすえる対策であり、行政の原点にある核心につながるとても大事な取り組みだと思っています。
坂之上:命を守るのが政治家の役目だと?
中山:はい。行政のおおもとは人の命を守ることです。一人の政治家として、できることは何でもせんといかんなと。
(構成、撮影:石川香苗子)
※後編に続く。
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