「世界一」の可能性は30%、いいなら実行[上] 柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長に聞く

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返品なしのユニクロの粗利益率は圧倒的に高い(50%、三越伊勢丹は28%)。ローコスト経営に徹し、損益分岐点は低い。反動への備えは“正しく”用意されていたのだ。

だが、平常心だったのは、柳井一人だろう。社内は動揺していた。

「僕はできません」

02年、柳井は副社長(当時)の澤田貴司に社長就任を打診した。澤田は97年、伊藤忠から入社。半年後に自分の定席だった商品本部長を任せるほど、信頼していた。その澤田が就任を断った。一説に、柳井は泣かんばかりに要請したという。

「泣いてはないですよ。彼は自分でビジネスをやりたかったわけ。そういう人にこの会社の社長をやってくれ、というのは酷ですよね」。

現在、再生ファンド「リヴァンプ」社長の澤田によれば、違う。「起業したいというのは、後付けの理由。自信がなかった。(売り上げが急落し)オロオロしていた。ユニクロの未来を背負うのが怖かった」。

「僕はできません」。「オレはもう会長になることに決めている」。押し問答の後、「玉塚社長」を提案したのは、澤田だった。玉塚元一は旭硝子、IBMを経て、澤田の誘いで入社した。陽気な若大将。うつむきかげんの空気を変えられるのは、アイツしかいない。柳井も同意した。

柳井は、なぜ、若手に社長を譲ろうとしたのか。「若い人のほうが体力がある。知力も体力に比例する。僕は経営者でありオーナー。会社が成長して財産が殖えたほうがいい」。

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