「世界一」の可能性は30%、いいなら実行[上] 柳井正・ファーストリテイリング会長兼社長に聞く
青果・英国進出の挫折 ヒートテック・NYの攻勢
柳井は言う。「唯一、自分の取り柄と思っているのは、いいと思ったら、実行すること。どんな決断も全員一致はありえない。過去のしがらみもある。だから、サラリーマン経営者は実行できない」。
自著『一勝九敗』で書いている。「(当社は)十回やれば九回失敗している。この失敗に蓋をするのではなく、財産ととらえて次に生かすのである」。フリース“反落”からの5年間は、その実践だった。
02年、周囲の反対を押し切って、野菜・果物の生産・販売に進出した。ファーストリテイリング・フーズ(FRフーズ)だ。やせた土壌で肥料も極力与えず、農作物の本来の力を引き出す「永田農法」に共感した。が、2年で事業を畳んだ。
工業製品の衣料は決まった納期に安定した品質で納入され、計画−実績−計画修正のサイクルをきちんと回せる。青果はできない。コントロールしようとすれば、本格的に生産に突っ込まねばならない。投入する人とカネが一ケタ違ってくる。
「そこまでやってお客様に評価してもらえるか。よくわかったのは、われわれが強い分野でないと、お客様は評価してくれない。お客様が期待しているのは、フーズじゃない」。
初の海外出店の英国進出。華々しく「3年で50店舗」を掲げたが、03年にいったん清算した。「玉塚君には悪いが、あれは経営の失敗」。玉塚は本体の社長に就任する前は、英国法人の会長兼CEOだった。
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