セブンカフェ成功の裏にあった「30年戦争」 ただひたすらに、市場の声を聞け!

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まず2002年に数店舗でセルフ方式のエスプレッソの提供を開始。カフェラテも用意し、2005年には関西・東海地区中心に約1000店、最終的に2000店に展開し、「バリスターズカフェ」は安定した人気を得た。若い世代を中心に一定の客層の取り込みには成功した。

しかし店舗当たり1日25杯の売り上げは、セブンにとってビジネス面で決して満足がいく結果でなかった。また圧縮抽出という方式は雑味まで拾ってしまう。エスプレッソはコアなファンがいる一方で、万人向けではなかったのだ。日本人の嗜好にはペーパードリップ式が合うという調査結果も得られた。

5回目の挑戦を支えた、「スターチーム」

4回もの失敗を経て、5回目に挑んだのは2011年。これまでの試行錯誤の経験を基に、幅広い客層にアピールするため、開発に2年間以上かけて、万全の体制で「おいしく飲みやすい本格派コーヒー」を目指した。

しかし王者セブンと言えども、単独ではセブンカフェは実現できなかった。セブンカフェを生み出したのは、セブンならではの「チームMD(マーチャンダイジング)」だ。これは、セブンがプロジェクトリーダーとなり、原料・製造・資材・機材などを提供するメーカーと共同で商品を開発する仕組みである。

まず200社のコーヒーの味を分析し、飲みやすさと飲み応えの最適なバランスを見つけ、万人受けするコーヒーの味を決めるところから始めた。

1杯ずつ豆を挽いて入れられ、かつセブンが求めるコンパクトさのあるマシンは存在しなかった。そこで富士電機と協業、豆を挽くグラインダー、挽いた豆に空気を送り込み湯の中で攪拌する仕組み、出がらしを入れるバケツ、店舗オーナーの操作しやすさなどを徹底して吟味。1年間を費やし、小型新型コーヒーマシンを共同開発した。

調達するコーヒー豆は、各国の最高グレードに限定。100%アラビカ種で、生豆の精製方法は焙煎時に雑味が残らないウォッシュド方式にし、さらに4種類のハイグレード豆を使用し、それぞれの特徴を引き出すダブル焙煎を採用。モニター調査を繰り返し、あらゆる場面に合う味を探った。さらに全国1万6000店舗に供給するために、安定して入手できることも重要だった。そこでコーヒー豆の調達は三井物産が担当。後に売り上げ拡大に伴い、丸紅も参加した。

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