無論、ショルツ首相もイギリスのジョンソン首相もプーチン氏から軽く見られていることに変わりはなく、あとはロシアへの経済制裁を実行するくらいしか、選択肢は残されていない。
第2次世界大戦以来、最大の危機に直面しているといわれる欧州の中で、EU議長国を務めるフランスには重苦しい空気が漂っている。EU内にはロシアの脅威を訴え続けてきたポーランドやバルト三国に耳を傾けなかったことを批判する声もある。
ウクライナのゼレンスキー大統領は非常事態宣言を出し、国際社会に「ただちに行動する」よう呼びかけた。さらに「プーチンによるウクライナの侵略を阻止できるのは、団結した強力な行動だけだ」とし、「慌てる必要はない」「私たちは勝つ」とウクライナ国民の団結を呼びかけている。
プーチンの我慢が限界に達した?
そもそもロシアの要求は、ウクライナがEUとNATOに加盟しないことの国際法上の確約を得ることだった。
裏を返せば、EUもNATOも2014年のロシアによるクリミア併合のときに取り交わしたミンスク合意(ウクライナ、ロシア、ドネツク人民共和国、ルガンスク人民共和国が調印したウクライナ東部ドンバス地域における休戦合意)が、紛争の再燃で事実上破綻していたのを放置する中、プーチンの我慢が限界に達したことにあるともいわれている。
フランス国際関係戦略研究所(IRIS)のディレクターで欧州安全保障の専門家、エドゥアール・シモン氏はフランス日刊紙ル・モンドのインタビューで、「(東欧に)派遣された部隊は、アメリカ兵であろうとほかのNATO加盟国の軍の兵であろうと、ロシアによるウクライナへの攻撃の際に使用されることを意図していない。NATOの枠組みの中での同盟国の防衛目的にほかならない」と指摘する。
さらに「そのNATOに対するマクロン大統領の姿勢は、欧州で広く理解されているわけではない」とシモン氏は言う。マクロン氏は2019年「NATOは脳死状態にある」と挑発的な発言を行い、欧州独自の防衛体制の構築を提唱するとともに、一方的にロシアとの対話を開始した。この行動は「特に中・東欧諸国の加盟国を不安にさせている」とシモン氏は述べている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら