「新型大国関係」という表現は胡錦濤政権末期から使用され始め、習近平政権前半に正式に採用されたアメリカや他の大国に対する政策理念である。胡錦濤期には、経済重視の対外協調を示す「韜光養晦・有所作為」政策が、より主権や安全保障を重視する方向へと調整されていた。それに対して、オバマ政権は従来の「関与政策」を維持しつつ、中国を責任ある利害関係国(responsible stakeholder)にすることを目指し、米中G2論を提起した。しかし、2009年11月に訪中したオバマ大統領に対して、温家宝総理は米中関係の重要性を指摘しつつも、G2論には賛成できないと述べた。
その後、米中関係はCOP15やオバマーダライラマ会談、南シナ海海洋進出問題などで緊張したが、2011年1月の胡錦濤国家主席の訪米により関係はある程度改善した。だがG2論はすでに挫折しており、アメリカ側からそれが提起されることはなかった。その後、中国側から提起されたのが「新型大国関係」であった。2011年8月、オバマ政権のバイデン副大統領訪中時、また2012年2月の習近平国家副主席の訪米時に、習近平からバイデン副大統領に「新型大国関係」が直接提起された。
新型大国関係の提起とアメリカの「受諾」?
2012年秋に成立した習近平政権は、当初基本的に胡錦濤政権末期の対外政策を継承していた。2013年6月、習近平新国家主席が訪米し、国家主席として改めて米中の「新型大国関係」を提起した。オバマ大統領は明確に諾否を述べず、ジョージタウン大学でそれを受け入れたかのような講演をしていたライス大統領補佐官も、11月にはアメリカはそれを受け入れているわけではないと述べた。
翌12月、バイデン副大統領が再び訪中すると、習近平は改めて新型大国関係について説明した。興味深いのは、オバマとの2度にわたる会談によってこの新型大国関係に関する米中間の合意があるかのように習近平が述べた点だ。この認識に立ったうえで、中国が南シナ海やサイバー空間などで一層強硬な政策を採用したのか否か、この点は未だ不明なところもあり、継続的な考察が必要である。
2014年11月末の中央外事工作会議において、習近平政権は2017年の第19回党大会での演説内容の核ともなる新たな外交方針を示した。特に、「中国的特色のある大国外交」として新型大国関係が述べられ、中国が先進国中心の秩序は受け入れず、発展途上国としての公正さを求めながら基本的に独自の価値観で対応することを明言した。これは、言葉のうえでのアメリカへの挑戦とも思われた。
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