2022年度診療報酬改定で今後の医療はどうなる? 従来と一味違う改定、医療制度改革案も提示

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②は、入院医療に関する改革事項である。わが国の入院医療には、同じ病気であれば、実際に費用がいくらかかっても同額の診療報酬を医療機関に支払うという包括払いという仕組みがある。それが、DPC制度である。包括払いの対となるのが、出来高払いといわれ、実際に行った診療行為に連動して診療報酬を支払う仕組みである。

出来高払いだと、検査をたくさんすればそれだけ医療機関に収入が多く入るなどの欠点があり、それを改めるために包括払い(あらかじめ定めた額の診療報酬を支払う)としている。

「入院1日当たり」から「入院1回当たり」へ変更か

ただ、現在のわが国の包括払いにも問題点がある。それは、包括払いといえども入院1日当たりの包括払いとなっている。そのため、患者の在院日数を長く延ばせば、それだけ医療機関の収入も増えるという性質が内包されている。

不必要に在院日数を長引かせれば、患者が寝たきりになる確率も高まり、望ましくない。そこで、改革提案としては、入院1日当たりの包括払いではなく、1人の患者の入院1回当たりの包括払いに変える、という案が出ている。これが実行されるか否かは、今後の医療改革論議次第である。

他方、外来医療では、わが国でかかりつけ医機能の未整備が、新型コロナで露呈した。東洋経済オンラインの連載拙稿「新型肺炎予防で露呈した日本の医療の『盲点』 『かかりつけ医』制度の未整備があだになった」で指摘したとおり、日ごろから自分の健康状態についてよく知り、身近で気軽に相談できる医師がいない人が、わが国で多い。今後は、かかりつけ医機能をもっと定着させるよう、診療報酬面からも検討してゆくことが、今回の制度改革事項に盛り込まれた。

2022年度の診療報酬改定での大臣合意事項は、2022年度からの医療だけでなく、2020年代を見据えたわが国の医療のあり方にも目配せした内容となったといえよう。

土居 丈朗 慶應義塾大学 経済学部教授

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どい・たけろう / Takero Doi

1970年生。大阪大学卒業、東京大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京大学社会科学研究所助手、慶應義塾大学助教授等を経て、2009年4月から現職。行政改革推進会議議員、税制調査会委員、財政制度等審議会委員、国税審議会委員、東京都税制調査会委員等を務める。主著に『地方債改革の経済学』(日本経済新聞出版社。日経・経済図書文化賞、サントリー学芸賞受賞)、『入門財政学』(日本評論社)、『入門公共経済学(第2版)』(日本評論社)等。

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