2022年度診療報酬改定で今後の医療はどうなる? 従来と一味違う改定、医療制度改革案も提示

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治療に必要な医薬品は、一般の市販薬を除き、医師の処方なしには服用できない。そのため、医薬品を処方してもらうには、その都度医療機関を受診しなければならない。さらに、受診の手間だけでなく、その際の医療費には患者の自己負担がつきまとう。そして、処方箋をもらうためだけの受診によって生じる医療費においても、その大半(3割自己負担ならば、残りの7割)には税金と保険料で賄われた財源が費やされており、それだけ、財政負担が多くなる。

処方箋をもらうためだけの受診で生じる、患者の通院負担と自己負担、そして財政負担。もらう処方箋が前回の処方箋とまったく同じものであるなら、その処方箋を一定期間繰り返し使えるようにすることで、これらの負担がなくなる。それが、リフィル処方箋の狙いである。

医療界は強く牽制したが…

リフィル処方箋に対し、医療界は強く牽制した。医療機関を受診せずに処方箋が繰り返し使えるとなると、医療機関への受診が減って、医療機関の収入が減るのではないか。医療機関を受診しないで医薬品が処方できることから、薬局で服薬指導をする薬剤師が主導権を握るのではないか――というのが医療界の懸念だった。

ではなぜ、今回、リフィル処方箋を導入することができたのか。

今般の診療報酬改定でリフィル処方箋の導入が決まった背景には、診療報酬の改定率をめぐる駆け引きがあったとされる。第2次安倍晋三内閣以降、首相の後押しもあり、診療報酬改定率は、高めに推移していた。そして、岸田文雄内閣に代わって最初の診療報酬改定を迎えた。

新型コロナウイルス対応をめぐり、診療報酬とは別に補助金が交付された医療機関の一部で、新型コロナ患者を受け入れていない実態が明らかになった。診療報酬とは別に投じられた補助金は、言うまでもなく追加的な財政負担である。

追加的な財政負担を強いられながら、それがタイムリーな新型コロナウイルス対応に十分には結び付かず、それでいて診療報酬の高めの改定率でさらなる財政負担の増加が生じる、となると、さすがに財政当局の堪忍袋の緒が切れそうである。

結局、第2次安倍内閣以降の過去3回の診療報酬改定率(消費税引き上げに伴う改定分を除く)の平均0.4225%よりもわずかに上回る0.43%の引き上げで、今回の診療報酬改定率は決着した。過去3回平均の改定率を下回る改定率だと、これまでよりも引き上げられなかったことを医療界に印象づけることになる。それを避けた形だ。

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