前述した不妊治療の保険適用は、診療報酬を0.2%押し上げる見込みであった。加えて、岸田内閣が力を入れている看護・介護・保育における処遇改善の一環で、看護職員の処遇改善を行うために、診療報酬を0.2%引き上げなければならなかった。診療報酬改定率を0.43%の引き上げに収めるには、残る改定項目で0.03%の引き上げに収めなければならない状況であった。
0.03%というと、診療報酬はほとんど上がらないも同然の引き上げ幅である。0.03%以上の引き上げ幅を確保して、医療界が実感を持って引き上げられたと受け止めることができるためには、別のところで診療報酬を制度的に引き下げられる効果のある仕組みを何か導入しなければならない。
そうした状況下、リフィル処方箋の導入で診療報酬が0.1%引き下げられる効果が期待できることから、今回の導入に至った。こうして、2022年度の診療報酬改定率は、2021年12月に0.43%の引き上げで決着をみたのである。
画期的だった「中長期的な改革項目の明示」
今回の診療報酬改定で画期的だったのは、単に改定率を決めるだけではなく、新型コロナウイルス感染拡大により明らかになった課題などに対応するため、今後の医療制度の改革事項についても、厚生労働大臣と財務大臣が合意して明文化させたことだった。例年の診療報酬改定は、改定率を決めて終えることが多かった。
その制度改革事項として、次の7点が明記された(以下はその要約)。
②在院日数を含めた標準化に資するDPC(診断群分類別包括評価)制度の算定方法の見直しなどのさらなる包括払いの推進
③医師の働き方改革に関する加算の実効性を向上させる見直し
④外来の機能分化につながるよう、かかりつけ医機能に係る措置の実態に即した適切な見直し
⑤費用対効果を踏まえた後発医薬品の調剤体制加算の見直し
⑥多店舗を有する薬局などの評価の適正化
⑦薬剤給付の適正化の観点からの湿布薬に対する処方の適正化
良質な医療を効率的に提供する観点から、診療報酬などにおいてこれらの改革を着実に進めることを、両大臣合意事項として掲げたのである。
東洋経済オンラインでの連載拙稿「『ワクチン後』に待ち受ける日本医療制度の課題 2022年度予算編成の焦点は診療報酬改定に」でも記したように、財務省は、今回の診療報酬改定に臨むにあたり「医療制度改革なくして診療報酬改定なし」と公言しており、それを貫いた形だ。
この中でも、今後の医療制度に大きな影響を与えそうな改革項目は、②と④である。
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