「赤ちゃんや臓器売る人も」アフガンの悲惨な現状 タリバン復権から6カ月で国は激変している

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だが、タリバン内では、アメリカ軍を撤退に追い込んだ武力闘争を率いたメンバーが論功行賞によって政権での権力を担うべきだとの主張から、ハッカニ師が内相代行、ヤクーブ師が国防相代行にそれぞれ就任した。

タリバンの報道担当者は、第1次タリバン政権時代の思考様式や目標から変わったかとのメディアの質問に対し、「原則や目標が変わることはけっしてない。ただ、時代様式に合わせてアプローチが変わる可能性はある」と述べている。多少の変化は受け入れる余地を見せながらも、厳格なイスラム法の解釈については墨守する考えだ。

教育や就労機会を奪われた女性たち

大半の女子生徒に対する教育機会は奪われ、女性の労働者も多くが職場から追われた。男女を隔離するための施設や体制、環境が整っていないとの理由で女子教育は中断された。一部で再開する動きも見られるが、女性たちは将来の夢を奪われてしまうのではないかとの絶望の淵に沈んでいる。

昨年12月には、女性が72キロ以上離れた場所に行く場合には、男性近親者の同伴を義務付けた。タリバンは、女性は頭髪を覆い隠すヒジャブを着用すべきだとし、一部では、全身を覆うブルカを強制するような動きもある。

国際社会の批判を懸念するタリバンは露骨な強制はできないため、女性たちが自主的に全身を覆うブルカを着用するよう、スローガンなどを使って社会に保守的な雰囲気を醸成しようとしているようだ。

第1次タリバン政権に比べてSNSなどの通信手段が発達し、タリバンの蛮行は、瞬時に世界に伝達される。露骨な弾圧がやりにくくなっていることは確か。その代わり、不穏な動きが続いている。女性の権利を主導するデモに参加した女性や人権活動家、ジャーナリストらが何者かに連れ去られる事件が相次いでいる。犯人は、タリバンかそれに関係する勢力とみられているが、タリバンは恐怖で社会を覆うことで市民の主張を封じ込めようとしている。

タリバンは、市民の動きを監視するため治安機関も設置。アラブ諸国などの独裁的な国家で見られるような「警察国家」的な統治手法を取り入れている。表向きには、穏健になったことを装いながら、恐怖支配によって市民の自由を封じる手口は、SNS時代に対応する形で狡猾さを増していると言えよう。

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