「赤ちゃんや臓器売る人も」アフガンの悲惨な現状 タリバン復権から6カ月で国は激変している

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欧米諸国は、女性の権利や少数民族の政権参画を求め、援助再開や政権承認をカードに使ってきたが、人道危機が深刻化したことから、まずは援助の再開に向けて舵を切り始めた。

タリバン政権を承認する国はまだ存在せず、タリバンは国際社会で孤立したままだが、このまま放置すれば、アフガン国内で内戦が勃発したり、タリバンがアルカイダなどのテロ組織との関係をより強化したりする動きにつながるおそれがある。経済危機がさらに深刻化すれば、アフガンは過激派組織の戦闘員を勧誘する格好の場となり、再び「テロの聖域」に転落する懸念が現実味を帯びる。

難しいタリバンとの付き合い方

アフガンでは、タリバンの権力が揺らげば、過激派組織「ISK」(イスラム国ホラサン州)などの過激派が台頭する可能性がある。欧米諸国にとっては最悪のシナリオとなり、アフガン国内に限定してイスラム教による統治を徹底したいタリバンの方がましという判断になる。

さらに、タリバンを冷たくあしらい続ければ、アフガンが中国やロシアの陣営に組み込まれる懸念もある。国際社会はタリバン政権を承認して懐柔するしかないとの論調も出てきている。

アフガン国民にとっては、アメリカ軍撤退で見捨てられ、さらに国際社会がタリバン政権の承認に動けば、出口のないトンネルが続くことになる。国外脱出を目指す動きも続いているが、悪評が広がるのを懸念するタリバンは、出国の動きを制限している。

不法越境して国外に脱出する道もあるが、厳冬期の今は命懸け。ブローカーに搾取される可能性もある。あるメディア関係者は、パスポートの有効期限が切れていたため、脱出に失敗。現在は更新作業がなかなか進まないものの、出国の機会をうかがっている。

池滝 和秀 ジャーナリスト、中東料理研究家

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いけたき かずひで / Kazuhide Iketaki

時事通信社入社。外信部、エルサレム特派員として第2次インティファーダ(パレスチナ民衆蜂起)やイラク戦争を取材、カイロ特派員として民衆蜂起「アラブの春」で混乱する中東各国を回ったほか、シリア内戦の現場にも入った。外信部デスクを経て退社後、エジプトにアラビア語留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院修士課程(中東政治専攻)修了。中東や欧州、アフリカなどに出張、旅行した際に各地で食べ歩く。現在は外国通信社日本語サイトの編集に従事している。

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