英国「コロナ制限解除下」で生じた新たな医療問題 ブースター接種は「ロシアンルーレット方式」

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一方、イギリス中の病院は今でも病床を埋め尽くすコロナ患者には頭を抱える。だが、その状況は昨年までのコロナ重症患者のときとはまったく異なっている。コロナ以外の病気やケガがきっかけで入院する患者に、コロナ感染が見られるケースが圧倒的に多いのだ。

私は12月からしばらく救急外来の応援に回されていたのだが、どんな病気・ケガであれ、要入院となった患者は必ずPCR検査をし、陰性、陽性を確認する。オミクロン株が出現した頃からの傾向として、入院時のPCR検査で初めて自分が陽性であることに気付くケースが増加している、というのがある。

コロナ以外の病気で入院し「陽性」判明

これらの患者の入院理由はさまざまだ。交通事故やスポーツ中のケガ、尿路結石、虫垂炎など、まさに「何でもあり」。陽性であってもほとんどが無症状なので、コロナの治療はまったく無用だ。問題は、これらの患者はコロナ病棟へ入院をさせるべきか、入院の原因となった診療科の病棟へ入院をさせるべきなのかで、そこは大きく揉めた。

「症状にかかわらず、コロナ陽性である以上はコロナ感染病棟に入れるべき」というのが私の勤務先で当初とられていた方針だが、そこで、なんと「無症状でワクチンも3回目を終えている。入院の理由となった診療科の病棟に入院させてほしい」。こんなリクエストが患者から次々と出たのだ。

患者側にしてみれば、本来はコロナ重症化患者のためのコロナ病棟に入院することには、不安を感じるようだ。しかし、無症状とはいえ、陰性患者だけが集まる病棟に陽性患者を入れることはできない。他の患者への配慮はもちろん、妊娠中や重症化リスクのある基礎疾患のあるスタッフも多く働いているからだ。

そこで設けられたのが、「コロナ以外の病気・ケガで入院する陽性患者の病棟」。彼らの入院理由はさまざまで、「PCR検査が陽性で、コロナ無症状」が唯一の共通点だ。患者もこの条件であればと同意してくれたが、これにも問題は残っている。

その1つは、患者がかかっている診療科によって主治医はバラバラで、治療計画や看護計画もまったく違うという点だ。例えば、整形外科の患者であれば移動介助のときに各種の用具を使うが、「本家」の整形外科病棟ほど多くは揃えられない。外科手術の鎮痛のやり方も各科で違い、手術後の観察も異なる。看護師は本来、配置先となった診療科病棟の専門的な勉強を日々重ねており、こうした「何でも屋病棟」の看護師の負担は小さくない。

また医師にとっても負担は大きい。自分の担当病棟での回診などを終えてから離れた「コロナ陽性病棟」まで行き、PPE(防護具)を装着して、コロナ陽性患者の回診をするのだ。この態勢が期間未定で続くとなると、スタッフも心身ともに疲弊をしていく。

さらに病院スタッフを振り回すのが、手術予定患者のPCR検査結果だ。
多くの病院が「手術前72時間以内のPCR検査の陰性証明が必要」とされ、基本的に手術日の3日前に手術予定の病院でPCR検査を受けてもらう。通常、検査結果は48時間以内に出るはずだが、増加するPCR検査数のため、手術日の朝にならないと検査結果が出ないことがある。

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