現在、イギリスの医療現場で起こっている問題を、イギリス正看護師、フリーランス医療通訳のピネガー由紀さんが報告する。
新型コロナ感染対策の基本といえる「マスク着用」や「ソーシャルディスタンス」。イギリスではこれらの制限が撤廃され、PCR検査による陽性後の隔離期間も最短で5日に短縮された。
感染対策が次々と緩和されていったわけだが、2月上旬のコロナ新規感染者数は1日8万人前後、全国のコロナ患者の入院者数は約1万5000人。この数字を見る限り、「イギリスのコロナ感染はもう安泰」と思う人はそう多くはないだろう。
ジョンソン政権「コロナ制限緩和」の根拠とは
もちろん、ジョンソン政権も「根拠」を無視して緩和を進めているわけではない。政府が示す根拠の1つは、感染者数に対する重症患者数の低さだ。
これは以前の記事(感染者増も「クリスマスを!」強気な英国のなぜ)でも書いたのだが、オミクロン株が主流となった秋以降、感染者の急増に対して重症者数と死亡者数に大きな増加は見られない。コロナ入院患者数は確かに増加したが、ICU(集中治療室)内のコロナ患者数は新年以降、減っている。
これらの根拠を支えるのがワクチン、特に3回目のブースター接種の順調な進み具合だ。
私のバイト先であるワクチン接種会場では、12月は「1日最高のワクチン接種人数は2000人以上、1時間当たりのワクチン接種人数は平均約100人」の成績をあげた。日本ではモデルナと比べてファイザーの人気が高いようだが、イギリスでは特別な事情がない限り患者に選択権はない。
接種会場では、受け付けを済ませた後にファイザーかモデルナかを自動的に割り当てられる「ロシアンルーレット」方式が採用され、「患者には可能な限りの選択肢を与える」という通常のNHS医療はワクチンに関してはあてはめる余裕などない。1月下旬までには国民の50%以上がブースター接種を終えており、これが感染対策の緩和と密接な関係があることは明らかだろう。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら