議員辞め「経営専念」、弁護士ドット元榮氏の真意 代表復帰、次の参院選「不出馬」の胸の内を聞く

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――株価の低迷が続いています。最近の株式市場の評価をどう受け止めていますか。

外部環境が大きいと思っている。ただ、今後業績で評価いただければ、過去の最高株価を上回る成長はできる。

――SaaS企業の成長性として物足りない部分があるのでは?

弁護士ドットコムの一部のサービスはSaaSとはいえない。別にSaaS企業になることを目指してサービスを行っているわけではない。

ただ、1月に発表した2021年度の第3四半期決算で、クラウドサインの売上高が初めて弁護士ドットコムのそれを抜いた。その点では、うちにもSaaS企業の例が当てはめやすくなった。

クラウドサインのARR(年間経常収益)は30億円近くになり、利益を出しやすくなった。今後は一定の利益を確保しながら先行投資を続け、新しいサービスをどんどん作っていく。

画期的サービスは「多数決」では生まれない

――新規事業についてはどう考えていますか?

既存事業の最大化が最優先だが、クラウドサインが立ち上がってきたので、新規事業も手がけていきたい。

「専門家をもっと身近に」「社会課題の解決」という軸はぶれない。ただその対象は、ほかの士業かもしれないし、獣医かもしないし、メンタルの分野かもしれない。そこはゼロベースで考えていきたい。

もとえ・たいちろう/1975年生まれ。1998年慶應義塾大学法学部卒業。1999年司法試験合格。2001年弁護士登録。2005年に独立開業。同年にオーセンスグループ(現:弁護士ドットコム)創業。2016年7月に参議院議員通常選挙に立候補し、当選。2017年6月より代表取締役会長に就任、2020年9月に財務大臣政務官に就任、「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」に則り代表取締役会長を退任。2021年10月に政務官を退任、2021年12月より現職復帰(撮影:尾形文繁)

弁護士ドットコムでは「一見さんお断り」という弁護士業界の風土を変えた。クラウドサインでは紙とハンコじゃないとダメという長年の商慣行を打ち破った。新しい常識を作り続けてきたという自負がある。ハードルが高いほど燃えるんですよ。

政治の世界にいたことも役に立つと思う。どのボタンを押せば世の中を変えられるのかという解像度。それは経営者の中でも高いと思っている。人脈もあるが、永田町や霞が関の人たちが何を考えていて、どうしたら政策になるかということに触れられたことが大きい。

今後はほかの会社だと諦めるようなことにチャレンジしていく。それが僕がわざわざ経営に戻ってきたことの意味だと思っている。

――次の参議院選挙の不出馬を表明した一方で、政界は引退しないとしています。

バッジを着けていることだけが政治ではない。それに人生100年時代。いつ当事者としてかかわるかわからないので、引退するわけではないと。

政治家としていろいろな方に育ててもらって、恩返ししたいという気持ちは強い。初めは1期で辞めるとは思っていなかった。ただ、政治家を経験する中で、日本の課題を解決するには、民間がサスティナブルに成長していかないといけないという気持ちが強まった。

企業の経営者は、民主主義では絶対に生まれないものすら作ることができる。弁護士ドットコムも、クラウドサインも、多数決の世界ではまず生まれてない。

――そうすると、選挙以降は当面経営者100%ですか?

そういうことです。当社を、日本の成長を牽引するような企業に育てていきたい。

並木 厚憲 東洋経済 記者

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なみき あつのり / Atsunori Namiki

これまでに小売り・サービス、自動車、銀行などの業界を担当。テーマとして地方問題やインフラ老朽化問題に関心がある。『週刊東洋経済』編集部を経て、2016年10月よりニュース編集部編集長。

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