アルコール依存の夫に耐えられず妻が「したこと」 それでも夫を見放さなかった、その理由とは…

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これまでのリカさんは、医師やソーシャルワーカーが講師を務める依存症の勉強会に参加しても、「家族にアルコール依存症の人がいない人が何を言っているの?」と、まったく聞く耳を持たなかった。しかし、同じ悩みを抱える仲間との出会いで救われてからは、勉強会を通じて徐々に「共依存」のことなどを受け入れられるようになった。

「学ぶことで、改めて共依存について理解することができました。今までは頭でわかった気はしていたのですが、理解はしていなかったんですよね。自分たちのせいで子どもたちに害を及ぼしてはいけないこと、親としてひどいことをしてきたことにも気づけました。私は私で人生を歩んでいい。夫のことを気にするのはやめよう。そう思えるようになったんです」

そして、迎えた2020年のクリスマス。その日も警察から「(夫を)迎えに来られますか?」との電話があった。リカさんは「今年もか」と思ったが、感情が高ぶることなく、冷静に対応した。

その日を境に、夫の酒はピタリと止まった

「これまでの5年間は『夫の病気を治さないと。お酒をやめさせないと』ということばかり考えていました。でも、夫が飲酒しても『飲んだんだ』と冷静に思えるようになったんですよ」

その日を境に、夫の酒はピタリと止まった。

夫が断酒してから、まだ1年。リカさんの心の傷は完全に癒えたわけではない。今でも夫が隠れて酒を飲んでいるのではないかと不安に駆られ、部屋に空き缶などがないか探してしまうこともある。しかし、リアルの例会やオンライン例会に参加し、リカさん自身、「回復」の道を歩んでいる。

「もしかしたら、離婚していたほうが幸せだったかもしれません。でも、私は夫とともに歩む道を選びました。離婚しなかった当初の理由は、子どもたちと私の人生をめちゃくちゃにされた責任を取ってほしいと意地になっていたからだと思います。

でも、今思えば、先ゆく仲間たちのおかげです。地獄を経験した仲間たちが、今は隣にいる夫と話している。いつかそうなれるかもしれないという希望がありました。あんなふうに、笑って過ごせる未来があるならば、もう少しがんばろうかなって」

長男は現在高校生、次男は今年4月から小学生になる。夫は、自ら進んでリアルの例会に足を運ぶことはないが、オンライン例会には参加しているという。「子どもたちには、これまでつらい思いをさせたぶん、できるかぎりのことをする。思い出を作る」と決めている。

依存症問題は、悩んでいる当事者に焦点が当たりやすい一方で、家族に目が向けられることは多くはない。しかし、誰にも相談できず、こころに傷を負っている家族がいることも忘れてはならない(※取材は2021年12月15日、オンラインで行った)。

(文:吉田緑)

【家族が参加できる主なオンライン自助グループ等】
<依存症オンラインルーム>
https://www.ask.or.jp/adviser/online-room.html
<ソーバーねっと(断酒会系オンラインミーティング一覧)>
https://addiction-peer.net/onlinemtg_result.html
<アラノン>
http://www.al-anon.or.jp/
<【家】アルコール依存症家族のグループ>
https://www.facebook.com/groups/543356579703360

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