アルコール依存の夫に耐えられず妻が「したこと」 それでも夫を見放さなかった、その理由とは…
「夫も飲酒を否定していましたし、医師が間違っていると思ったんです。それに、周囲には夫が『依存症』とは言えない。せめて、別の病気であってほしい一心でした。でも、どの病院でも『アルコール依存症』と診断され、肝機能の数値も異常だと言われました」
それから、リカさんは目を背けたくなる現実を突きつけられることになる。ある日、夫の部屋を掃除していると、ベッドの下や押入れの天袋、本棚に並ぶ本の裏などから、酒の空き缶や空き瓶が次々と見つかった。夫はリカさんにウソをつき、隠れて酒を飲んでいたのだ。
コンビニの前で焼酎をラッパ飲み
夫の不動産収入のみでは生活が苦しくなり、リカさんは産後4カ月で仕事に復帰した。夫には、アルコール依存症の専門医療機関に行くように伝えた。夫は病院に足を運んだものの、「看護師に『あんたみたいな頭がおかしい人、こんなところ来られても意味ないよね』と言われた」、「受付ににらまれて腹が立った」などと言い、すぐに通院しなくなった。
「当時の私は無知だったので、アルコール依存症をバカにしていたんです。『アルコール依存症』と診断されたくない思いでいっぱいでしたし、診断されることへの恐怖も感じていました。そんな思いもあり、夫に『そんなひどいところには行かなくていい』と伝えたんです。冷静に考えれば、そんなことをする病院があるとは思えないのですが……。
でも、母が朝方、家から徒歩5分ほどのコンビニの前で、焼酎をラッパ飲みしている夫をみかけたと話していて。夫にはお金を渡していないので、お酒を盗んだのでは? と不安になり、犯罪者を出すぐらいならば、恥を捨てて病院に連れて行くしかない、と思いました」
その後すぐに、リカさんは夫を専門の医療機関に3カ月間、入院させた。制約が多い入院生活に耐えきれず、夫は「退院したい」と訴えていた。
「家族を精神科に入院させてしまったという後ろめたさから、自分を責めることもありました。でも、正直、夫がいなくなって育児に専念できるようになり、ホッとしている自分もいたんですよね。夫には『がんばって治して、家族になろう』と励ましていました」
入院中は、家族であるリカさんも、毎週平日1日、勉強会や家族会のほか、院内例会(病院で開催される当事者や家族が集まるミーティング)に参加しなければならなかった。毎週仕事を休まなければならず、院内例会も「宗教の集まりみたい」と感じ、「この人さえいなければ、こんなところに出なくていいのに」と夫への不満や怒りを募らせていった。