アルコール依存の夫に耐えられず妻が「したこと」 それでも夫を見放さなかった、その理由とは…
入院さえすれば、夫は治ると思っていた。しかし、退院してから3日後に夫は飲酒し、再び寝てばかりの日々に逆戻りした。リカさんの両親は、見切りをつけて家を出て行った。
リカさんは、寝ている夫を見ては「私は必死で働いて、子育てしているのに」と怒りがこみ上げてくる日々を過ごした。いつの日からか、怒りを抑えきれなくなり、寝ている夫を蹴ったり、「おまえのせいだ」「なんでおまえは生きているんだ」などと暴言を吐いたりするようになった。
「しんどい」思いをしたのは、家庭だけではなかった。
リカさんが働く病院に飲酒して倒れた夫が運ばれてきた際には、仕事仲間に憐れみの目で見られた。「まだ離婚しないの? あんなクズ男捨てなよ」とも言われた。
ママ離婚していいよ。僕を1人にしないで
離婚も考えた。実の父親を覚えていない長男は、「母子家庭になるのは、弟がかわいそう。どんな父親でもいいから」と反対した。しかし、日に日に追い込まれていったリカさんは、寝ている夫を蹴りながら、長男に「この父親を見てみな! あんたが離婚するなって言ったから!」などと暴言を吐くようになった。
当時中学生の長男は黙って聞いていたという。
「とにかく悲惨な毎日でした。自分が人に暴力をふるったり、暴言を吐いたりするなんて思いませんでしたし、こんな私ではなかったのに、と思いました。寝る前にわれに返り、子どもたちに言ったことを思い出しては、泣いていました。こんな生活ではなかったのに、何をどう間違えたんだろう? 私が悪かったのかな? などと考えたり、死にたくなったりしたこともありました」
子どもたちの誕生日やクリスマスなどのイベントごとも、夫が飲んで出て行くか、飲んだ夫にリカさんが暴言を吐くかのどちらかだった。
夫に酒をやめさせようと、なんでもした。土下座したり、号泣して訴えたりしたこともあれば、自分に包丁を突きつけながら「そんなに私が嫌いなら、殺して!」と叫んだこともある。騒ぎに気づいた長男が駆けつけ、「ごめんね、僕のせいだよね。ママ、離婚していいよ。僕を1人にしないで」と泣きながら止めに入ったこともある。
「長男にそこまで言わせてしまった自分を責めましたし、今思い出しても涙が出ます。私を殺せば、夫はわれに返り、酒をやめるかもしれないと思ったんです。精神的に壊れてしまい、子どもたちのことが見えなくなっていました。夫はまったく覚えていないようですが……」
リカさんは、ふと、院内例会に参加したときに「吐き出すことで、楽になっていた」ことを思い出した。夫が退院してから約1年経ったころのことだ。調べてみると、近くで断酒会(アルコール依存症の自助グループ)の例会が開催されていることがわかり、足を運んだ。
リカさんが現状を話すと、その場にいた仲間たちは口々に「一緒!一緒!」と言った。どの仲間も、過去にアルコール依存症の家族に暴力を振るわれたり、子どもに被害が及んだりするなど、壮絶な体験をしていた。