アメリカの「賃金インフレ」は簡単には止まらない 金利上昇で、株価はまだ下落する可能性がある

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代表的なのがアマゾン・ドット・コムの対応だろう。3日の引け後に発表された同社の昨年10~12月期決算は1株当たり利益が27.75ドルと、3.77ドルとしていた市場予想を大幅に上回った。利益の大幅な増加そのものは株式売却などの特別利益計上によるもので、売上高や今年1~3月のガイダンスは市場予想を下回ったことからもわかるとおり、内容は決して強気一色というものではなかった。

それでも同社の株価は市場予測を上回ったことで一時大幅に上昇、アメリカ市場全体にも買いが集まった。だが、1株利益や売上高以上に市場の注目を集めたのは、サブスクリプションサービス「アマゾンプライム」のアメリカでの年会費を2月18日から引き上げると発表したことだろう。年会費はこれまでの119ドルから139ドルへと、約17%もの値上げとなる。

これはミクロ的な視点で見れば、同社の収入増につながることから、株価の上昇要因かもしれない。だがマクロ的な視点で見ると、コスト増を背景とした物価上昇が本格的に始まっていることを示唆する、警戒材料と受け取るべきだ。

そもそも、アマゾンは注文の受け付けこそオンラインだが、その後は商品配送という、多くの労働力を必要とする事業が付随している。「アマゾンプライム」の値上げが人件費の高騰を受けての決断だったことは間違いないし、影響力の大きい同社の値上げに同業をはじめとしたほかの企業が今後追随する可能性も高い。

供給不足よりもはるかに厄介な「賃金インフレ」

昨年までの物価上昇は、主にサプライチェーンの混乱に伴う供給不足の問題や、需要の急速な回復、商品価格の高騰による部分が大きかった。だが、今後は賃金上昇がインフレの主因となる可能性が高い。これは供給不足の問題よりもはるかに厄介で、長期的なインフレにつながるとみておいたほうがよい。

実際、10日に発表された1月の消費者物価指数は前年比で7.5%の上昇と、1982年2月以来、40年ぶりの高い伸びとなり、インフレ圧力がさらに強まる可能性が高まった。これでFRB(連邦準備制度理事会)が3月15~16日に開く次回FOMC(連邦公開市場委員会)で、積極的な金融引き締めを打ち出さざるをえなくなるとの見方が急速に広がっている。

市場では、3月のFOMCで2000年以来となる50bp(0.5%)の利上げが実施される可能性が一段と上昇している。だが、次の5月開催のFOMC以降も断続的な利上げが実施されるのはもちろん、FRBがバランスシート縮小というQT(量的金融引き締め)も速やかに乗り出すことも十分にありうる。

消費者物指数の発表を受けて、アメリカの10年債利回りは2%の節目をあっさりと抜けた。だが、ここがピークとはならず、今後もさらに上昇していくことになりそうだ。FRBが断続的に金融引き締めを行う結果、金利上昇を嫌気する形で株価が下落する局面が長期間続きそうだ。

(当記事は「会社四季報オンライン」にも掲載しています)

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