アメリカの「賃金インフレ」は簡単には止まらない 金利上昇で、株価はまだ下落する可能性がある

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アメリカではオミクロン株感染はピークを越えたものの、直近まではそれこそ尋常ではないペースで広がった。確かに重症になる可能性はこれまでの変異株よりは低いものの、感染すると自宅待機を求められる。

テレワーク対応ができる業務ならまだしも、実際に現場に出ての業務が求められるサービス業などの職種では、人手不足の問題が解消していない。昨年のクリスマスあたりから、航空会社がパイロットやキャビンアテンダントの不足によって大量の欠航に追い込まれたことがニュースとなったが、こうした状況は当然のようにほかの業種にも広がっていった。

雇用引き留めのために一部では「2重払い」も

企業側は従業員がコロナ陽性となった場合、業務継続のためには代替の人材を確保する必要に迫られる。今の人手不足の状況下では、そうした人材も簡単には集められず、賃金が急速に上昇しているというわけだ。

一方、感染して自宅待機となった従業員にも、十分な給料を支払い続ける必要がある。そうしないと、コロナから回復した従業員が他社に引き抜かれてしまうからだ。

結果として企業は、コロナ感染で一時業務ができなくなった従業員にも、ピンチヒッターで雇った従業員にも、今までよりも高い給料を支払わざるをえなくなっている。雇用が予想を大幅に上回る伸びとなっているのは、こうした企業の過剰雇用によるものであり、時間当たり賃金の大幅な上昇も同じ理由によるものと、考えてよい。

実は、こうした状況は1918年から感染が急速に拡大したスペイン風邪のときにも見られており、パンデミック特有の現象ということができる。感染が収束に向かうまで、まだしばらく過剰雇用と賃金の上昇が続くのではないか。

こうした状況は、もちろん企業にとって大きな痛手だ。割高な賃金を、業務に必要な数を大きく上回る従業員に支払い続けないといけないのだから、雇用コストの上昇は相当なものだ。当然、これは値上げという形で消費者に転嫁せざるをえない。

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