アメリカの高度専門家の給与が高いことは、ビジネススクール卒業生の初任給のデータからもうかがうことができる。
ハーバードやスタンフォードなどの有名ビジネススクールでは、卒業した直後の初任給が15万ドル程度だ。つまり、1700万円くらいになる。
それに対して、日本の場合には、大学院生の初任給は男女平均で年306万円だ(厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査の概況」による)。
これは医学部も含む数字だから、それを除けば200万円台だろう。
日本は、専門家を評価せず、彼らに対して相応の報酬を払っていないことがわかる。
平等に貧しい日本社会
OECD(経済協力開発機構)によると、2020年における賃金は、日本が3.85万ドルでアメリカが6.94万ドルだ。だから、日本はアメリカの6割以下だ。
上で見た専門家の年収や大学院卒の初任給の開きは、これよりずっと大きい。
つまり、平均における日米格差よりも、高度専門家における日米間格差のほうが大きいのだ。
日本では賃金所得はアメリカより平等に分配されており、アメリカの場合には所得の偏りが著しいということになる。だから、これは、分配の問題として捉えることができる。
しかし、それだけではない。
1つは、技術者の専門家としての能力が評価されているかどうかだ。
アメリカでは、転職のマーケットが形成されている。日本では、このようなマーケットはない。ジョブハンティングや個別的な人脈に頼らなければならない。
日米のもう1つの基本的な違いは、アメリカ企業の収益率が高いことだ。
巨大IT企業の収益は非常に高い。それは、専門家の力が実現しているものだ。
例えば、アップルの場合には、つぎのとおりだ(2010年度)。
売り上げから原価を引いた付加価値の総額は、1528億ドルだ。従業員数は15.4万人なので、1人当たりでは99.2万ドルになる。仮にこの6割が人件費だとすると、59.5万ドル。日本円では、6785万円になる。
経営者の報酬などを差し引いたとしても、高級技術者に1人当たり数千万円の年収を支払うことは十分可能だろう。
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