なぜ運動を頑張ってもなかなか痩せないのか ダイエットと運動の関係を科学的に徹底解説

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

似たような研究結果は複数存在しており、これらの結果を受けて、米国スポーツ医学会と米国糖尿病学会は「運動のみで体重減少を達成しようとするのならば1日60分以上の運動が必要である可能性がある」という共同声明(*8)を発表している。

ダイエットに成功したとしても、一度減った体重を維持するためには、かなりの運動が必要であると複数の研究結果(*9)からわかっている。具体的には体重1kgあたり11~12kcal/日の運動量が必要(*10)になる。

筋トレより有酸素運動

運動の種類によって体重への影響も異なる。有酸素運動と筋力トレーニングを比較した実験の結果(*11)によると、有酸素運動をしたグループのほうが8カ月後の体重減少が大きかった。

『HEALTH RULES 病気のリスクを劇的に下げる健康習慣』(集英社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

さらに有酸素運動と筋力トレーニングをセットでやったグループの体重変化は、有酸素運動のみをしたグループと変わらなかった。この研究でも体重は少ししか減らず、運動だけで瘦せることの難しさをあらわしている。

しかし、体重を減らせなくても、運動をすることで筋肉量が増えるなどで腹囲が減って見た目がスリムになるという効果は期待できる。さらには、運動することで糖尿病、高血圧、認知症などのリスクが下がり(*12)、健康で長生きできるようになることがわかっている。

このように運動には様々なメリットがあるのでぜひ積極的に日々の生活に取り入れてほしいのだが、体重を減らすという意味では効果は限定的である。逆に言うと、運動を始めてもなかなか体重が減らないからといって意味がないと諦めないでほしい。さまざまな健康上のメリットがあり、それはあなたの人生をより良いものにしてくれるのだから。

(*1)Franz MJ et al. Weight-loss outcomes: a systematic review and meta-analysis of weight-loss clinical trials with a minimum 1-year follow-up. J Am Diet Assoc. 2007;107(10):1755-1767.
(*2)Pontzer H et al. Hunter-gatherer energetics and human obesity. PLoS One. 2012;7(7): e40503.
(*3)Melanson EL et al. Resistance to exercise-induced weight loss: compensatory behavioral adaptations. Med Sci Sports Exerc. 2013;45(8):1600-1609.
(*4)Paravidino VB et al. Effect of Exercise Intensity on Spontaneous Physical Activity Energy Expenditure in Overweight Boys: A Crossover Study. PLoS One.2016;11(1): e0147141.
(*5)Thivel D et al. Is there spontaneous energy expenditure compensation in response to intensive exercise in obese youth? Pediatr Obes. 2014;9(2):147-154.
(*6)Dhurandhar EJ et al. Predicting adult weight change in the real world: a systematic review and meta-analysis accounting for compensatory changes in energy intake or expenditure. Int J Obes (Lond). 2015;39(8):1181-1187.
(*7)Ross R et al. Reduction in obesity and related comorbid conditions after diet-induced weight loss or exercise-induced weight loss in men. A randomized, controlled trial. Ann Intern Med. 2000;133(2):92-103.
(*8)Colberg SR et al. Exercise and type 2 diabetes: the American College of Sports Medicine and the American Diabetes Association: joint position statement. Diabetes Care. 2010;33(12):e147-e167.
(*9)Fogelholm M & Kukkonen-Harjula K. Does physical activity prevent weight gain--a systematic review. Obes Rev. 2000;1(2):95-111.
(*10)Schoeller DA et al. How much physical activity is needed to minimize weight gain in previously obese women? Am J Clin Nutr. 1997;66(3):551-556.
(*11)Willis LH et al. Effects of aerobic and/or resistance training on body mass and fat mass in overweight or obese adults. J Appl Physiol(1985). 2012;113(12):1831–1837.
(*12)Reiner M et al. Long-term health benefits of physical activity--a systematic review of longitudinal studies. BMC Public Health. 2013;13:813.
津川 友介 カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)准教授

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

つがわ ゆうすけ / Yusuke Tsugawa

東北大学医学部卒、ハーバード大学で修士号(MPH)および博士号(PhD)を取得。聖路加国際病院、世界銀行、ハーバード大学勤務を経て、2017年から現職。著書に『週刊ダイヤモンド』2017年「ベスト経済書」第1位に選ばれた『「原因と結果」の経済学』(中室牧子氏と共著、ダイヤモンド社)、『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)。ブログ「医療政策学×医療経済学」で医療に関する最新情報を発信している。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事