なぜ運動を頑張ってもなかなか痩せないのか ダイエットと運動の関係を科学的に徹底解説

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人間が摂取するカロリーは全て口から入るものであるため、それは100%自分でコントロールできるが、消費するカロリーは全体のわずか10~30%しか私たちにはコントロールできないことを意味する。

私たちの多くは日中の多くの時間を座って過ごしているため消費カロリーが少なく、もっと身体を動かすことができれば消費カロリーは増えると思っているが、その考えは間違っている可能性が指摘されている。

タンザニア中北部の先住民族であるハヅァ族の代謝を調査した研究(*2)がある。ハヅァ族は狩猟採集民族であり、日常的にかなり身体活動量が多いため、消費カロリーも多いというのが研究の仮説であった。しかし実際に測定してみると、ハヅァ族と欧米人の消費カロリーは変わらなかった。消費カロリーの大部分は基礎代謝であるため、身体活動量を増やしても消費カロリーはあまり増えないことが示唆されたのだ。

運動をすると基礎代謝が落ちる

消費カロリーが運動で増えた時に、摂取カロリーが変化しなければ理論上は瘦せるのだが、実際にはこの2つは無関係ではない。一般的に運動をするようになるとお腹が空くようになり、食事の量が増え、摂取カロリーが増える傾向(*3)がある。さらには、運動をするようになると、身体を休めるために横になって休む時間が増えるなど、日常生活の身体活動量が減る可能性(*4・5)も示唆されている。

さらには、運動をすることで、基礎代謝が落ちてそれ以上エネルギーがマイナスの状態にならないようにストップするメカニズムが働くことがわかってきた(*6)。原始人は飢餓によって命を落とす危険性が高かったように、人類の歴史上ずっと摂取カロリーが足りない状態が続いていた。飽食の時代になって摂取カロリーのほうが消費カロリーよりも多くなったのはつい最近のことである。なので、カロリーバランスがマイナスの状態が長く続くと、生命の危険があるため、人間の身体は自然と基礎代謝を落とすことでカロリーバランスを保とうとすると考えられている。

食事制限をせずに運動のみで瘦せるのは不可能なのだろうか? 必ずしもそうでないものの、運動のみで瘦せるにはかなりの運動量が必要になるのだ。例えば、52名の肥満男性を対象とした実験(*7)の結果によると、運動のみのグループの体重減少は、食事(カロリー)制限したグループと同等に有効であった。しかし、この研究における運動のみのグループでは1日あたり60分(700kcal)の運動が行われ、これは一般的に推奨されているの運動量(週150分間)よりかなり多かった。

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