「にほん昔話」から幸せの秘訣を見いだせる理由 人間の弱さや嫌な部分をあるがままに肯定する

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いつも洗濯している川の向こうから、大きな桃が流れてくるかもしれない。亀を助けたら竜宮城へ連れて行ってもらえるかもしれない。そんなふうに、日常的な風景にいろんな夢を埋め込んだ装置としての役割も、かつての昔話は果たしていたのだと考えられます。

その文脈で考えると、今の時代の夢埋め込み装置はラノベやアニメでは? 空から少女が降ってきたり、異世界に転生してまったりスローライフを送ったりといったパターンの話がウケるのも、変化のない日常に夢想を詰め込んで癒やしを提供しているからでしょうね。(吉田氏)

日本の昔話は西洋のものとどう違う?

もうひとつ、日本の昔話や落語の人気噺を見て特徴的だと思うのが、「金持ちになりました、めでたしめでたし」で終わる話が西洋に比べると少ないことです。あるにはあるのですが、それよりはほのぼのした不思議な話のほうが日本では圧倒的に多い。これは、日本人はずっと昔から金持ちになることと、ウェルビーイングな人生を送ることは、別問題だと理解していたからだと考えます。

『むかしむかし あるところにウェルビーイングがありました 日本文化から読み解く幸せのカタチ』(KADOKAWA) 。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「ごはん、お風呂、布団」はお金で買えても、その先にある生きがいのようなものまでは買えません。そして日本の昔話のメインキャラともいうべき老人たちにとって、老い先短い人生で大金を手にしてもあまり意味がない。むしろ、何かを楽しみに待つ時間が奪われてしまうことだってあるでしょう。

年収がある水準を超えると、収入と幸福感は相関しなくなる、という研究結果が出ていることからもそれは明らかです。お金は生活に安定をもたらしますが、絶対の幸福までは約束してくれません。

だからこそ、いつの時代も人は無意識のうちに「何かを楽しみに待つ」時間を欲してきたのではないでしょうか。旅行前日の準備の時間が一番ワクワクするように、何かを楽しみに待つことは、それ自体がウェルビーイングな状態なのです。

石川 善樹 予防医学研究者

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いしかわ よしき / Yoshiki Ishikawa

1981年、広島県生まれ。東京大学医学部健康科学科卒業、ハーバード大学公衆衛生大学院修了後、自治医科大学で博士(医学)取得。(株)Campus for H共同創業者。「人がよりよく生きる(Well-being)とは何か」をテーマとして、企業や大学と学際的研究を行う。 専門分野は、予防医学、行動科学、計算創造学など。

Twitter:@ishikun3

個人HP:yoshikiishikawa.com

 

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吉田 尚記 ニッポン放送アナウンサー

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よしだ ひさのり / Hisanori Yoshida

1975年東京都生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。『ミュ~コミ+プラス』(月~木曜日24時より放送中)のパーソナリティとして「第49回ギャラクシー賞DJパーソナリティ賞」を受賞。「マンガ大賞」発起人および選考委員。著書『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』(太田出版)が累計13万部(電子書籍を含む)を超えるベストセラーとなり、近著に『没頭力 「なんかつまらない」を解決する技術』(太田出版)がある。マンガ、アニメ、アイドル、落語、デジタルガジェットなど、多彩なジャンルに精通しており、年間100本に及ぶアニメやアイドル、ゲームなどのイベントの司会を務めている。

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