「東京五輪銀」日本女子バスケが重ねに重ねた準備 彼女たちを率いて旋風巻き起こした男が説く心得
そんなときに私は練習後にその選手と話をして、「何を迷っているの? あなたの仕事はシンプルだよ。空いたらシュートを打つ。簡単でしょう? 考えすぎだよ」と伝えます。
一方で、私は試合中によく「頭を使って!」と言うことがあります。それは「考えてプレーをしなさい」ということではありません。選手たちはチームで決められたルールを理解しています。それぞれの役割もわかっています。ならば、余計なことを考えずに、頭を使って、チームルールと、その中での自分の役割を練習どおりにやってください、という意味だったのです。少しニュアンスが異なります。
シンプルなことをちょっと思い出して遂行するだけ
むしろほかの国よりも日本のほうが頭を使っていると思います。100個以上とも言われるたくさんのフォーメーションがあり、それらの動きを細部まで追求しています。キャンプでそうした頭を使う準備をたくさんしてきたから、実際の試合では考えなくても、自然と体が動くはずです。それをうまくできていないのは、たとえばコーナー(コートの角)まで走っていないなどの、細かいことが抜け落ちているからです。
頭を使うとは、そうしたシンプルなことをちょっと思い出して、遂行するだけ。ああして、こうして、ディフェンスがこう来たら、こう動いて、などと考えることではないのです。
目標に向けて、迷うことなく突き進むためにはさまざまな準備が必要です。しかもそれを綿密に、細部に至るまで何度も繰り返す必要があります。そうすることで、本番を迎えたときには深く考えなくても済むのです。
東京2020オリンピックが始まったら、私たちは目の前のゲームで勝つことだけに集中しました。もう準備は終わっているのです。もし結果を出せなければ、そこには反省しかありません。それくらいの覚悟を持って、準備を進めていきました。
オリンピック期間中も選手たちにいくつかのことを、シンプルに伝えたのですが、その中の1つに、これがありました。
「私たちが準備してきたことを忘れないで。私たちは世界で一番準備してきたから、それを信じて」
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