「東京五輪銀」日本女子バスケが重ねに重ねた準備 彼女たちを率いて旋風巻き起こした男が説く心得

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そんなときに私は練習後にその選手と話をして、「何を迷っているの? あなたの仕事はシンプルだよ。空いたらシュートを打つ。簡単でしょう? 考えすぎだよ」と伝えます。

一方で、私は試合中によく「頭を使って!」と言うことがあります。それは「考えてプレーをしなさい」ということではありません。選手たちはチームで決められたルールを理解しています。それぞれの役割もわかっています。ならば、余計なことを考えずに、頭を使って、チームルールと、その中での自分の役割を練習どおりにやってください、という意味だったのです。少しニュアンスが異なります。

シンプルなことをちょっと思い出して遂行するだけ

むしろほかの国よりも日本のほうが頭を使っていると思います。100個以上とも言われるたくさんのフォーメーションがあり、それらの動きを細部まで追求しています。キャンプでそうした頭を使う準備をたくさんしてきたから、実際の試合では考えなくても、自然と体が動くはずです。それをうまくできていないのは、たとえばコーナー(コートの角)まで走っていないなどの、細かいことが抜け落ちているからです。

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頭を使うとは、そうしたシンプルなことをちょっと思い出して、遂行するだけ。ああして、こうして、ディフェンスがこう来たら、こう動いて、などと考えることではないのです。

目標に向けて、迷うことなく突き進むためにはさまざまな準備が必要です。しかもそれを綿密に、細部に至るまで何度も繰り返す必要があります。そうすることで、本番を迎えたときには深く考えなくても済むのです。

東京2020オリンピックが始まったら、私たちは目の前のゲームで勝つことだけに集中しました。もう準備は終わっているのです。もし結果を出せなければ、そこには反省しかありません。それくらいの覚悟を持って、準備を進めていきました。

オリンピック期間中も選手たちにいくつかのことを、シンプルに伝えたのですが、その中の1つに、これがありました。

「私たちが準備してきたことを忘れないで。私たちは世界で一番準備してきたから、それを信じて」

トム・ホーバス バスケットボール男子日本代表ヘッドコーチ

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Tom Hovasse

1967年1月31日生まれ。アメリカ・コロラド州出身。203cm。5歳のときにバスケットボールを始める。ワイドフィールド・ハイ・スクール、ペンシルベニア州立大学卒業。大学卒業後、ポルトガルリーグのスポルティングを経て、1990年に日本リーグのトヨタ自動車ペイサーズ(現:アルバルク東京)に入団。1994年にはNBAのアトランタ・ホークスに所属。その後、日本リーグに復帰し、2000年に引退。以後、一般企業を経て、2017年には女子日本代表ヘッドコーチに就任。東京2020オリンピックバスケットボール女子日本代表ヘッドコーチとして、日本史上初のオリンピック銀メダル獲得に導いた。現在は男子日本代表ヘッドコーチとして活躍。

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