北京五輪で選手たちを怯えさせる「絶対タブー」 発言の何が許されて、何が許されないのか

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

アメリカやカナダなど、いくつかの代表チームが選手らに注意を促しているように、人権問題について発言すればIOCルールと中国の法律の双方に抵触するおそれがあるためだ。

国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチのソフィー・リチャードソン中国担当部長は、北京冬季オリンピックでの言論の自由の欠如について、数十人の選手から連絡を受けたと話す。

「多くの選手が連絡してきた。中国は今回が初めてという選手か、中国は初めてではないが状況や環境がよくわからないという選手たちで、どんな言動なら許されるのか、気をつけることは何か、中国当局の反応はどのようなものになるのか、といったことを質問してきた」という。

中国の人権問題は、2008年夏の北京オリンピックと同様に、今大会に向けても大きな懸念要素としてくすぶり続けてきた。そして昨年秋、オリンピック出場経験もあるプロテニス選手の彭帥氏が中国共産党最高指導部メンバーだった人物から性的関係を強要されたと告発すると、この問題は新たに切迫度を増したように見えた。

彭氏の投稿はすぐにソーシャルメディア上から削除され、同氏の行方がわからなくなったことから、事件は世界的に炎上。1月に行われたテニスの全豪オープンでは「彭帥はどこ?」と書かれたTシャツがいったん禁止されるも、その後、主催者側が折れて観客の着用が許可されるという出来事があった。

いま問題となっているのは、このようなシャツ、あるいは別の形の抗議が北京オリンピックで姿を現すのかどうか、だ。

問題のオリンピック憲章

オリンピック関係者の間では、これまでも政治的な発言が論争の的になってきたが、今回の北京五輪では一段と熱を帯びることになった。中国は、政治や宗教などの自由に関する調査で、つねに最も抑圧的な国の1つと位置づけられている。

問題となっているのは、オリンピック参加者に「政治的、宗教的、人種的プロパガンダ」を禁じたオリンピック憲章第50条だ。この条項が適用された有名なケースは1968年のメキシコシティオリンピックで、アメリカの短距離走者ジョン・カーロス選手とトミー・スミス選手がアメリカ国歌の演奏中に表彰台で拳を突き上げて黒人差別に抗議し、大会から追放された。

最近ではこのルールは緩和され、選手たちはオリンピック村やその周辺、ソーシャルメディアで意見表明することが許されているものの、今でも競技会場や表彰式でのプロテストは禁じられている。ただ、アメリカのオリンピック・パラリンピック委員会は2020年に姿勢を一段と軟化させ、平和的な抗議活動に加わった選手を委員会として罰することはもうない、と発表した。

次ページ「ヒトラーの五輪と同じ」が人権団体の声
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事