コロナ禍でも「日々を豊かに」できる感性の磨き方 細かい変化に気づく「観察力」を身につけよう
それは重要なこととして、ときにはその知識が邪魔になることもあると、知っておかなくてはなりません。自然に音を楽しむ感覚や、無意識下に眠る感性がはたらかなくなってしまうのです。感性と知識、どちらかがもう一方に蓋をしてしまってはいけません。
そこで、たとえばクラシックのコンサートに行ったとき、たまに、それぞれの楽器の音ひとつひとつを選んで意識的に聴いてみてください。ひとつの楽器に意識を向けて、その演奏者の動きを観察し、そこから聴こえてくる音を全体のシンフォニーから聞き分けてみましょう。
音楽を聞くときは1つの楽器に集中してみる
ずっと観察し続けていると、複雑に重なりあった音のなかから、その楽器の音色だけが耳に飛び込んでくる瞬間があります。そこから個別の響きを再度合体させて全体のハーモニーを楽しむと、前よりもさらに楽曲を楽しめるようになるのです。
全体のなかにある細部に意識を向ける習慣を身につけることで、自然と深い観察ができるようになります。これは音楽の話に限りません。たとえば料理なら、口に広がる味のなかから、ひとつひとつの食材や調味料の味に意識を集中させてみるのもいいでしょう。
味や音を因数分解して観察することで、感受性は向上していきます。それぞれの細部の良さを知ったうえで、全体の調和を味わったときに、すべてのハーモニーを理解できるのです。
■モノの配置を「体で覚えて」みる
みなさんは、目をつぶったまま自分の部屋を歩けますか?
仕事から帰宅して、部屋がまっくらなままカバンをおろし、ソファにたどり着き、テレビのリモコンを手に取る。もしかしたら、意外とできてしまうのではないでしょうか?
このように、私たちは頭ではなく、体で場所を記憶していることがあります。そして心地よい配置を感覚的に覚えていると、多少の変化があったとき、少しの違和感にも気づけるようになります。そこで、身近なモノの配置を決めてみましょう。
例として、茶道における道具の配置について説明させてください。茶道では、お抹茶を点てるために使う陶磁器や漆などの作品、お茶碗、お湯を沸かす釜、それに水を入れておく水指、そしてお茶を掬う茶杓など、さまざまな道具を使います。
そして、すべての道具の配置はミリ単位で決まっています。茶道の場合は「畳の目の数」を基準とした測り方があります。畳の膨らんでいる筋目ひとつのことで、「1目」は1.51センチです。たとえば、「畳の縁から16目に座る」「5目離して置く」などのように単位として使います。
私も茶道を習いはじめたころは、「16目」と言われてもぱっと理解ができず、1目ずつ指で数えてたしなめられたものです。それが、ずっと「1目」単位の配置を意識していると、だんだんと慣れてきて、数えなくても物を置く場所がわかるようになりました。
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