コロナ禍でも「日々を豊かに」できる感性の磨き方 細かい変化に気づく「観察力」を身につけよう

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たとえば、料理人が料理をしたあとはシンクに洗い物がほとんど残りません。それはひとつの料理に集中するだけではなく、お客さんの食事の進行度合いを見て、食器の片付けなども含めたすべての段取りを組み立てて、一度の動きで複数の仕事をしているからです。

一度に複数をこなす習慣を身につけることで、周囲を観察する意識が高まります。これは料理に限ったことではなく、日常でも応用できます。

食器を洗う。ついでに蛇口の部分を磨いておく。

手を洗う。ついでにタオルを替えておく。

1階に物を取りにいく。ついでに2階から持っていくものを携える。

書いてみると特別なことではないように思いますが、実際に毎回の行動で意識するのは、なかなか難しいことです。

茶道では洗練された動きを極めている

実は茶道の手前では、こういった動きがたくさんあります。たとえば、2服目のお茶を1服目と同じお茶碗で点てるとき。お湯を入れたお茶碗を手のひらで包んでゆっくりと回し、「洗う」と「器を温める」を同時に行います。

また、大勢の方が参加するお茶会でお運びとしてお手伝いをするときには、「手ぶらで帰ってこないように」と注意されます。広間にお茶を運ぶと同時に、水屋へ下げるものがないか確認して、必ず何かを持って帰ってくるようにします。

一見とてもゆっくりと行っているようにみえるお茶のお点前ですが、実は極限まで効率化され、洗練された動きなのです。これを心得ていると、オフィスを移動するときも、家の中を移動するときも、自然と周りに意識が向くようになります。

観察しながら動き、できることを同時にこなす。そんな意識を持てれば、ふだんは気づいていなかったことにも意識が向くようになるでしょう。

■音を「分解して」聴いてみる

感性というと、「文化や歴史などの知識を学ばねば」と思う方もいるかもしれません。しかし、知識はときに、私たちの観察の目を曇らせます。

たしかに、文化や歴史の知識といった教養を身につけることで、作品への理解は深まります。たとえばクラシック音楽を聴くときなら、その歴史的背景や作者の来歴を知っているほうが、深く聴くことができるかもしれません。

ベートーベンの交響曲第2番、第2楽章は、とても美しく牧歌的なメロディですが、作曲されたのはベートーヴェンの持病であった難聴が悪化した時期でした。その背景を知ると、この曲とのギャップに驚かされます。この美しいメロディが、もっと追い詰められたものに聞こえるかもしれません。

つまり、背景や歴史を知っているのと知らないのでは、感じ方が変わります。感性は知識の集積の上に成り立つものでもあるのです。

次ページときには知識が邪魔になることも…
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