物不足が「ニューノーマル」になるという大問題 サプライチェーン問題はすぐには解決しない

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しかし、政府や中央銀行がどのようなインフレ抑制策を講じようと、企業が商品の生産と流通に苦戦する状況は変わっていない。

半導体不足は世界中で自動車生産の足かせとなり、医療機器のほか、さまざまな電子機器メーカーの生産を妨げる要因となっている。国際通貨基金(IMF)は1月25日に公表した世界経済見通しで2022年の成長率予想を前回の4.9%から4.4%に下方修正したが、理由の1つとして引き合いに出されたのがサプライチェーン問題だった。

サプライチェーン問題の広がりと持続性の背景には、過去数十年にわたるトレンドが新型コロナ禍で加速したという事情もある。中でも大きいのが、Eコマース(電子商取引)の成長だ。

大手ブランドは従来、世界各地の工場から中央の倉庫に商品を輸送し、そこから小売店に商品を出荷してきた。ところが、家庭や企業に個別に商品を届ける電子商取引では、これよりもはるかに複雑な作業が必要になる。

需要が集中する場所、すなわち大都市圏付近にある倉庫は商品で溢れ返り、余力がまったくなくなっている。

アメリカの貿易港、中でも特に重要度の高いロサンゼルス港とロングビーチ港のコンテナターミナルが機能不全に見舞われ続けているのは、こうした倉庫不足のためだ。

到着した船から降ろされた荷物を格納するスペースは限られているため、コンテナは回収されることなくドックに積み上がる。コンテナ船は荷下ろしの順番待ちで沖合での待機を命じられ、その期間は数日どころか、数週間に及ぶケースも出るようになった。

作業の追いつかない貿易港が直面するのは、次のような構造問題だ。インフラは老朽化し、酷使され、トラックがコンテナの輸送に使うシャシーも足りない。そして、運送会社の賃上げにもかかわらず、トラック運転手が十分に確保できない、といった問題である。

「サプライチェーンにおけるこうした構造問題は、何年も前から続いていた」。そう指摘するのはスティーブ・ダウズ。シカゴを拠点とするサプライチェーンのコンサルティング企業、フォーカイツのシニアバイスプレジデントだ。「パンデミックは、サプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにしたにすぎない」とダウズは言う。

サプライチェーン問題はパンデミックに起因する一時的な現象に終わるとの見方は多いが、それにもかかわらず、問題は続いている。

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