物不足が「ニューノーマル」になるという大問題 サプライチェーン問題はすぐには解決しない

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コロナ禍が始まった最初の数カ月間に株価は急落し、アメリカの企業にはレイオフ(一時解雇)が広がった。そして、感染への懸念、ロックダウン、所得の減少から自社製品に対する需要が低下すると考えたメーカー各社は生産活動を一気に絞り込んだ。

半導体メーカーが生産量を落とし、グローバルな海運企業が運航を減らしたのも同様の理屈からだ。だが、これは完全な誤算だったことが明らかとなる。

パンデミックがもたらしたのは、消費の減少というよりは、消費内容のシフトだった。人々は外食やスポーツ観戦、遊びに出かけるのをやめる一方で、ロックダウン下での生活に合わせて自宅環境をグレードアップするためにお金を使った。地下室には新たにランニングマシーンを買い、ベッドルームオフィスにはデスクや椅子を、リビングルームにはゲーム機を買ったわけである。

多くのエコノミストは、数カ月もたてばモノに対するアメリカ人の需要は落ち着き、サプライチェーンの混乱は収まるとみていた。ワクチン接種が進み、世界の多くの地域でパンデミックの勢いが弱まるにつれて、消費者は調理用ミキサーの購入をやめてレストランに戻ると考えられていた。

だが、そうした変化はまだはっきりと訪れているわけではない。

対策を阻む「不透明感」という名の金縛り

そして、今後の展開についても強い不透明感が漂っている。

例えば、ある家庭が地下室のエクササイズルームに数千ドルを費やした場合、その家庭の住人はパンデミックが収束したとしても、ジム通いを再開しない可能性がある。

また、ホワイトカラーの仕事に就いている人々は、スエットパンツでビデオ会議に参加できる在宅勤務が始まってから今年で3年目を迎える。このうち、ビジネススーツを再び身にまとうチャンスに飛びつく人は、どの程度いるだろうか。そしてこのことは、スーツなどを販売する小売業者にどのような影響をもたらすことになるのだろうか。

しかもこれらは、企業の将来予測を左右する、ごく一部の変数にすぎない。不透明な状況の中、トラック、海運、倉庫、テクノロジーなど、サプライチェーン問題の緩和につながる投資を企業が躊躇している可能性は拭えない。

実際、企業はサプライチェーンの大混乱に直面しているにもかかわらず、経営層は問題解決の難しさとそれにかかる費用の大きさから、問題に正面から対処するのを躊躇している様子だ。

コンサルティング企業のアリックスパートナーズが最高経営責任者(CEO)3000人以上を対象に行った最近の調査では、サプライチェーン問題に対処するために長期的な行動を取っているという回答は半数に満たず、過半数が短期的な対策に頼っていると答えた。そして、どのような取り組みをしているかにかかわらず、自分たちの計画の有効性について懐疑的だとしたCEOが全体の4分の3以上に上った。

(執筆:Peter S. Goodman記者)
(C)2022 The New York Times Company

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