北京五輪の陰で「東京五輪レガシー」の不安な将来 「後利用が困難」と見られる海の森水上競技場は今

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そのうえで「稼げる施設」への転換を図っていかなければならない。同競技場は2019年段階で年間2億7100万円の赤字を予想。もともと収支的に厳しい見通しだが、コロナ禍で大規模イベントを開催しづらい状況が続けば、さらに苦境に陥ることも考えられる。

1月に訪れたときの海の森水上競技場(写真:筆者撮影)

今のところ再開業後に決定している大会は、ボートの全日本選手権、2022年国体のボート・カヌーの関東ブロック予選、カヌー東京都選手権など6つだという。

「他にもトライアスロンなど調整中のものがいくつかあります。ただ、2022年は工事が続くため、国際大会については本格再開業の2023年度以降になります。2024年パリ五輪の選考会に当たるカヌーのアジア選手権・スプリント競技はこちらの施設で行うことになると思います」と安達氏は説明する。

カヌー・ボートの競技人口は限られる

今後は指定管理者の海の森水上競技場マネジメント共同企業体が中心となって、ボートやカヌーの協議会誘致を推進し、少しでも大会の回数を増やすことが必要になる。

とはいえ、国内にはカヌー競技者が350人しかおらず、ボート競技も1600人程度。マイナースポーツであるため、競技会もそうそう開けない。五輪期間に現地を訪れた実業団ボート選手も「東京五輪を生観戦し、興味を持つ人が増えれば、競技人口も大幅に増加する可能性はあったと思います。が、無観客でチャンスがフイになった。こんなに風通しのいいところだけに、コロナ感染リスクは皆無に近い。本当にお客さんを入れて五輪をやってほしかった」と残念がっていた。

競技に比重を置いた収益アップが難しい状況だけに、日常的な活用促進を強化していくべきだ。東京都と指定管理者は「スポーツ・健康・文化をテーマにしたイベント実施やジョギングコースとしての活用を考える」ということで、五輪1年延期で空白期間となった2020年10~12月にかけて施設見学会や競技体験会、フィットネスプログラムなどを実施。五輪後への布石を打ったもようだ。

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