ロシアの「ウクライナ侵攻」いつ、どう始まるのか それは正真正銘の戦争とは違った形をとる
ロシアはウクライナへの侵攻計画を繰り返し否定。NATOによる国境付近での軍事演習やウクライナへの武器供与によって安全を脅かされているのはロシアのほうだ、という立場をとっている。
軍事専門家らによると、ロシアが持つ計略のレパートリーは豊富で、最初の一手を予測するのは不可能に近いという。それを立証するのが、2014年に起きたウクライナへの最初の侵攻だ。
このときは覆面をした謎の武装勢力がクリミア半島に現れ、軍事介入を行った。ロシアは当初関与を否定していたものの、後に認めた。同年には続いて、「休暇中」や「ボランティア」と称するロシア兵がウクライナ東部で戦闘行為に加わった。
事実、「プラハの春」からアフガニスタン、チェチェンの紛争に至るまで、過去半世紀のソ連・ロシアによる軍事介入のほとんどは偽装工作で始まっている。混乱の種をまくことが、その目的だ。
ロシアが画策する「侵攻の口実作り」
限定的な侵攻は、NATO加盟国にくさびを打ち込むというロシアの目的に資する可能性がある。ロシア制裁の十分な根拠となるのかどうかをめぐって加盟国の間で意見が対立する展開が予想されるためだ。アメリカのバイデン大統領は先日、侵攻には至らない挑発行為への対応について西側同盟国に分断が広がる可能性を示唆、ヨーロッパから反発を受けた。
ウクライナ東部でロシアが支援する分離独立派と8年近く戦い続けてきたウクライナ兵士は、こうした不透明感の中で神経をすり減らしている。
ロシアはウクライナ侵攻をどう正当化するのか。その不吉なヒントが、ヨーロッパ安全保障協力機構(OSCE)のロシア大使コンスタンチン・ガブリロフ氏の23日の発言に表れている。同大使は、自国民が脅威にさらされた場合にはロシア政府として対抗措置をとると述べた。ロシアはウクライナ東部の紛争地帯で分離独立派に属する何万人という人々にロシア国籍を与えている。
「われわれの国民が攻撃された場合は容赦しない」とガブリロフ氏は言った。次の警告はない、というのだ。「犬は吠えるだけだが、狼はかみつく。(狼がかみついたら)それで終わりだ」