「コーダあいのうた」がこだわった障害者の描き方 監督が語るデフカルチャーを題材にした理由

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――聴覚に障害があり、俳優でダンサー、監督でもあるアレクサンドリア・ウェイルズ氏をASLの監督として迎え入れ、台本の監修の他、撮影現場での手話通訳は全て彼が担当したとのことですが、そこまでこだわった理由はどのようなものだったのでしょうか。

聴覚障害者の家族を支えるルビー(エミリア・ジョーンズ)は優れた歌唱力があることから、都会の名門音楽大学の受験を強く勧められるが…… © 2020 VENDOME PICTURES LLC, PATHE FILMS

自分はデフカルチャーのアウトサイダーの人間ですが、自分が経験したことのない世界を描き出す時には、その経験のある方とコラボレーションすることが大切なことだと感じています。世界中に手話は200以上存在しますが、ASLは、アメリカ英語の単なる置き換えではなく、生き生きとして創造的で流麗に体現された言語です。

自分もこの映画を作るためにASLを学んでいましたが、そこまで流暢ではなかった。そこで、今回はアレクサンドリア氏にASLの監督となってもらい、制作に加わってもらいました。

例えば、最初に耳の聴こえるスタッフが配置した家具についても「聴覚障害者のいる家庭ではこういうふうに家具は置きません」と指摘がありました。部屋のどこにいても、人が入って来たかがわかるように必ずドアが見えるように置き、視覚で物事を捉えやすいように、円を描くように物を配置するそうです。

そうした聴こえない人でしかわからないディテールの指導を受けたことにより、より映画にリアリティーを与えることができました。

障害者の描き方に違和感を抱いていた

――日本には「障害者はかわいそう。だから彼らの奮闘を描いた感動ものにしよう」という‶感動ポルノ″と呼ばれる作品も数多くあります。しかし、この作品はそうした「かわいそう」という目線を排し、彼ら彼女らの人間としてのリアルな心情が描かれていると感じました。

最初からいわゆる「感動ポルノ」にしたくないという気持ちはありました。聴覚障害者が題材となっている作品はたくさんあるのですが、しっかりと描き切れておらず、やはり「憐れむべき対象」という型にはめた感じのものもあります。それから主人公の障害者が、ノーブル(高潔)で勇気がありすぎて、普通の人では辿り着けないような描写をしているものもありました。

そのどちらも障害者を肯定的に描いたものではないと感じていました。確かに、彼らは耳が聞こえないわけですが、それが彼らのすべてではありません。「障害者」という枠組みではなく、リアルな人間としてのキャラクターを描き出したかったという思いがあったんです。

映画に出てくる父親は漁師でもあるし、小さな町の住人でもある。そして、彼らの周りの人たちとのやり取りを通して、彼らがどんな人間であるのか浮かび上がるような描き方をしたいと思いました。

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