セレンディピティの「魔法」で道をひらく3秘訣 「なぜか運の良い人」が無意識にしている下準備

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世界は今、さまざまな政治的、社会的、環境的変化に直面しており、私たちの未来の大部分を決めるのは予想外の要因だ。予想外によって組織の存続が脅かされることもある。

ある世界的な金融機関のCEOは私とのインタビューで、未来に備える姿勢をこう説明してくれた。「未来に対するマスタープランがあるなどと、ゆめゆめ思ってはならない。たまたま起きたチャンスを、われわれがつかんできただけだ」。

このCEO率いる経営陣は、社内に方向性を与えるためのビジョン、カルチャー、行動規範だけを示し、後は社員が予想外の場所で、予想外の方法で何かを生み出すのに任せている。つまり社員がセレンディピティ・フィールドを生み出す手助けをしているのだ。

セレンディピティと単なる偶然との明確な違い

私は研究を通して未来に活躍できる個人や組織の条件を探っているが、そのなかで繰り返し気づかされることがある。

一流の人材はたいてい(無意識のうちに)予想外に対処する能力を身につけているのだ。フォーチュン500企業のディーゼルエンジン大手、カミンズCEOのトム・リネバルガーは、自らの活動の中核をなすのはセレンディピティを生み出す努力だという。それこそが不確実な時代に受け身にならず、能動的に企業を率いるための方法だと考えているからだ。

「私たちが能動的に引き起こしたセレンディピティは、セレンディピティと言えるのか」と疑問に思う人もいるだろう(私自身、そんな疑問を抱いていたこともある)。

その答えは間違いなくイエスだ。というのも、それこそがセレンディピティと単なる偶然との明確な違いだからだ。

セレンディピティを育むというのは要するに、世界をオープンな目で見て、点と点をつなごうとすることだ。たまたま良いタイミングで良い場所に居合わせたら、何かいいことが降ってくるというのではない。

重要なのは私たちの心構えであり、セレンディピティのプロセスに積極的に関与することだ。

クリスチャン・ブッシュ サンドボックス・ネットワーク共同創設者

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Christian Busch

ニューヨーク大学(NYU)とロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)で、パーパス・ドリブン・リーダーシップ、イノベーション、アントレプレナーシップを教える。LSEでイノベーション・アンド・コクリエーション・ラボの共同ディレクターとコースリーダーを務めたのち、NYUではセンター・フォー・グローバル・アフェアーズ(CGA)のグローバル・エコノミー・プログラムのディレクターを務める。LSEにて博士号(Ph.D.)取得。20カ国以上で活動する若手イノベーターのコミュニティであるサンドボックス・ネットワーク、強い影響力を持つリーダーの集まりであるリーダーズ・オン・パーパスの共同創設者。

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