「なにごとも、使命感がないと、あかんな」

悩み抜いた末に得た、生涯における悟り

昭和の大経営者である松下幸之助。彼の言葉は時代を超えた普遍性と説得力を持っている。しかし今の20~40代の新世代リーダーにとって、「経営の神様」は遠い存在になっているのではないだろうか。松下幸之助が、23年にわたって側近として仕えた江口克彦氏に口伝したリーダーシップの奥義と、そのストーリーを味わって欲しい。毎週木曜日に掲載します。(編集部)

 

松下幸之助は、妻のむめのと、その弟の井植歳男、加えて、友人2人の5人で、16歳から就職した大阪電燈(現在の関西電力)在職中に自ら考案した電球ソケットを製造販売する事業を大正6年(1917年)に始めた。

創業当時、途方に暮れる松下を救った出来事

しかし、その売り上げは芳しくなかった。もう、事業はやめなければならないかと思いつつ、途方に暮れた思いで、松下が道を歩いていると、川北電気の人と偶然出会った。その人が松下に、そのソケットの素材で、扇風機の絶縁板をつくってくれないかと依頼される。これによって、松下は、窮地を脱することになる。幸運と言う以外にない。事業は拡大。それに伴い、翌年3月7日、改めて大阪市北区西野田大開町に移り、ここで、正式に松下電気器具製作所を創業する。以後の発展は、目を見張るものがある。

のちに、松下が、経営に成功した理由を聞かれると、多くの場合、「運がよかったからですわ」と答えているのは、この時の幸運が意識の根底にあったからかもしれない。

ところで、松下電器の創業記念日は、いつかというと、5月5日になっている。どうしてそうなっているのかというと、松下が、松下電器の真の使命を感得し、社員に闡明(せんめい=はっきりしていなかった道理や意義を明らかにすること)したのが、昭和7年(1932年)5月5日だからである。

その時の所主告示には、

「……凡ソ生産ノ目的ハ吾人日常生活ノ必需品ヲ充実豊富タラシメ、而シテ其生活内容ヲ改善拡充セシメルコトヲ以テ其主眼トスルモノデアリ、私ノ念願モ亦茲(ここ)二存スルノデアリマス。我ガ松下電器製作所ハ斯カル使命ノ達成ヲ以テ究極ノ目的トシ今後一層コレニ対シテ渾身ノ力ヲ振ヒ一路邁進センコトヲ期スル次第デアリマス。……」

とある。松下電器の使命とは何か。

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